世界的な感染症の拡大、働き方の価値観や環境がどんどん変化しています。このような過渡期に転職を余儀なくされた人や、これを機に転職を考えるようになった人も多いでしょう。
特に50代で転職を考えている方は定年の延長やアクティブシニアの活躍などの朗報もありますが、50歳からの転職は厳しい状況にあり、理想より現実を直視して仕事を探すべきという意見も聞かれます。
この記事では、50代で転職するにはどうすべきか、転職成功率を上げる6つのポイントを徹底解説していきます。
記事の目次
1. 50代の転職の現実|成功率は5%以下
近年、50代の転職希望者は年々増加しています。
その背景には、終身雇用制度の崩壊や、労働条件や仕事内容、給与に関する不満、人間関係など所属する会社に対する様々な理由や、近年注目されているキャリアアップ、自身の求める仕事の希望などがあるようです。
2019年の45歳~54歳の転職者は57万人で、この6年間で16万人増加しており、転職者全体の約16%を45歳~54歳の転職者が占めていることから、転職市場における50代の割合は少なくありません。
では50代の転職成功率は何%なのでしょうか?転職成功率といっても「希望した会社に転職できる確率」「どこかの企業に転職を成功させられる確率」など定義はさまざまです。また、条件を下げれば転職の成功率は必然と高まるため、一概に成功率を判断することはできず、成功率のデータもほとんど公開されていないのが現状です。
そこで重要な指標が転職入職率です。転職入職率を見ることで、「実際に転職を成功させた人の割合」がわかります。転職入職率とは常用労働者数に対する転職入職者数の割合で、過去1年以内に他の会社に勤めていた人が入職した割合です。
では、厚生労働省「雇用動向調査」(2019年)を参考に、はじめに50代の転職入力率を実際の数字で見てみましょう。
50代男性の転職入職率(離職から1年以内に転職した人の割合)は、50歳から54歳までは6.3%、55歳から59歳までは5.3%と他の世代と比べて低い水準になっています。
転職入職率の低さから50代の再就職は難しいと感じたかもしれません。しかし、40代の数値を見てみると、40歳から44歳までの成功率は5.9%と、50代と40代を比べても大きく変わらない数字となっています。
しかし、40代の転職期間は3か月に対して、50代は6か月と再就職を決定させるまでに時間がかかってしまいます。
この結果、50代の再就職はやはり苦戦するということがわかります。
では、その苦戦や転職が厳しいと言われる理由を探ってみましょう。
2.50代の転職が厳しいと言われる理由3つ
実は50代対象の求人が少ない
50代の転職が現実的に厳しいと言われる大きな理由の1つが50代対象の求人が少ないことです。
厚生労働省職業安定局の「中途採用に係る現状等について」によると、50歳以上の中途採用について「あまり採用は考えていない」と答えた企業の割合は67.0%です。企業側としては50歳以上の採用に積極的とは言えません。
さらに、企業の採用率では、40代の正規雇用の採用率52.6%に対し、50代では28.7%と大きく下がる結果となっています。非正規雇用であっても50代の採用率は24.5%と決して高いものではありません。
若い世代と比較すると、経験やそのポジション、経歴などから、50代の人材は人件費が高くなりがちであるため、採用も少なくなります。
また、前職と同じポジションや立場を求める人が多いほか年齢が高く経験が多いために高いプライドを持つ人も少なくないため、採用を躊躇する企業が多いのです。
そして、60代は定年後に非正規社員で採用でき、人件費が安く済むなどの理由から積極的に採用したいという企業が増えるため、入職率が50代よりも高くなっているのも現実です。
給与面のこだわりがあるとミスマッチになりやすい
給与面のミスマッチも転職も50代の転職が厳しいと言われる理由の1つです。
前職での給与水準を保持したい人だけでなく、キャリアをもとに給与アップを目指している人も多く、場合によっては雇用条件とのミスマッチが生まれてしまいます。
ヘットハンティングやキャリアアップであれば話は別ですが、50代以外はほとんどの年代において転職で収入が上がるのとは対照的に、50代が転職すると収入が減少する可能性、リスクが高くなります。
厚生労働省「雇用動向調査」(2019年上半期)によると、転職した人のうち、賃金が増えたと回答した割合は50~54歳で34.3%、55~59歳で23.6%でした。
一方、減少した割合は50~54歳で41.5%、55~59歳で73.1%となっており、上昇した人よりも減少した人の方が多いという結果となっています。
50代での転職は、年収をどこまで落とせるのかを考慮することがポイントです。
特化したスキルや経験が求められる求人が多い
企業側が50代の人材に求めるのは今までの経験、スキルや、人脈です。
50代は実務経験が豊富なので、知識レベルだけではなく実務的なスキルを身につけている人材が求められます。
実例で言えば、大手電機メーカーにおいて工場長だった人材が、自動車部品メーカーに転職し国内工場の生産体制強化や海外拠点の立ち上げ責任者を任されるケースもあります。
また、大手電機メーカーで外販部を創設し、事業をリードしてきた50代男性が、報酬水準を維持したまま情報システム部門の責任者に転職し、社内システムの整備・再構築を担当するなど、組織を管理するマネジメントの経験やスキルも求められています。
50代の転職者には、部門組織や新拠点の責任者といったオファーもあり、事業をリードする力など、経験や知識を問われることが多いと言っても過言ではありません。
また、経験や人脈を生かした若手や人材の育成や、専門の知識や技術を生かした企業の課題解決など企業にとって即戦力となることが求められます。
自身に何が求められているのか、自分がそれに応えるスキルを持っているのかをしっかり見極めて転職活動することが必要です。
3..50代の転職を実現する6つのポイント
これまで、実際の50代の転職は難しい現状をまとめてきましたが、実際に転職を成功させている人もいます。
中小企業やベンチャー企業では、能力があるベテラン人材を求める会社も多く、50代でも転職するケースがあります。
実際に中小企業で2代目の社長を支える技術者や総務などのマネージャーが採用されている事例もあるほか、ベンチャー企業では、経験や知識、人脈を生かした営業担当や、若手を育成する人材を採用している例もあります。
そして大手企業は、その業界でのノウハウや専門知識、技術力、そしてベンチャーのネックとなるマネジメント能力を持っている50代の人材を求める傾向にあります。
さらに、近年では50代の人材の活躍を後押しする動向もあり、この流れも意識すれば転職では有利となります。では、転職の成功率を上げる具体的な6つのポイントをみてみましょう。
>>関連記事:50代の転職成功率は何%!?|成功につながる4つのポイントを紹介
人脈を活用し、紹介で転職する
50代の強みの1つが過去のキャリアを通じて培った人脈です。
転職成功率を上げるには、この人脈を生かし紹介で転職する方法もあります。
人脈を頼った転職や再就職は、紹介者の人間性によって左右される場合があります。
「この人が紹介する人材ならば間違いはないだろう」と紹介者が保証人のような状態となり強い味方になる場合もあります。
実際に面接や面談をする前から紹介をしてくれる人脈の評価がプラスに転ずる状態なのです。人からよせられる信頼は、その厚みが違います。
年齢が高くなればなるほど、信頼は厚くなるべきで採用する側は、その信頼を頼りに雇用すると言っても過言ではないでしょう。
LinkedInやWantedlyなどのビジネスSNSを活用する
SNSを利用することで転職活動の幅が広がり、自分にあった仕事が見つけやすくなります。
さまざまなSNSがある中で、転職や再就職に活用できるのは、LinkedInやWantedlyなどのビジネスSNSです。
リアルタイムで仕事に役立つ情報を得ることができ、さらに人脈が広がるツールとして人気が高まっています。
LinkedInはアメリカ発のSNSで、TwitterやFacebookのように投稿機能などがあります。
ビジネスネットワークの構築や転職・採用など、ビジネス向け機能に特化しているところが特徴です。
さらに企業向けの採用機能もあり、海外も含めて多くの企業が人材獲得に活用しています。
一方、Wantedlyは求人情報サイトとしての機能が強く、転職先を探す機能があり、企業の募集に対してエントリーすることも可能です。また仕事上で出会ったり、仕事をしたりした人脈の管理もできるので、注目する企業や人脈などの一括管理が可能です。
幅広い職種に触れることや日常では出会うことができない企業や人脈を獲得することができる可能性も高いと言えるでしょう。
求人数の多い転職エージェントに無料相談する
50代の人材向けの求人数は少なく、情報の入手が難しいのが現実です。自身での転職活動を進めることに不安がある場合は、転職エージェントに登録し無料相談を受けることをお勧めします。
転職の傾向を知り、転職のプロであるエージェントに登録することで、求人を紹介してくれるだけでなく、専任のキャリアアドバイザーから無料で面談やサポートを受けることができます。
本当に転職した方が良いのか、どのような転職活動が自身には向いているのか、最良の転職先など、転職エージェントなら多くの転職者を見てきたキャリアコンサルタントが客観的なアドバイスをしてくれます。客観的な意見は大変重要になります。
自分のネックとなっている部分や、自身の強みやキャリア、経験を含めた市場価値を明確にできるでしょう。
エージェントから企業への推薦状を得られることも大きなバックアップとなります。
実務的な部分でも、履歴書などの提出書類の添削、面接のアドバイスを受けられます。
働きながらの就職活動であれば、面接日程の調整、入社日の交渉など、転職を考えている企業との間に立って話を進めてくれることは活動の強みとなります。
このような手厚いサポートを受けることができる転職エージェントで転職活動を行うのも有利となります。
前向きな転職理由を転職エージェントに伝える
転職活動において、面談時に頻繁に聞かれる質問が「転職を考えた理由」です。、理由を伝える時には「前向きな転職であること」を伝えましょう。
実際は、人間関係が辛いことや、給与や待遇への不満などネガティブな理由を挙げる人が目立ちますが、それをストレートに伝えてしまうと、何かしらの問題を抱えている人なのだというイメージを招き、採用後も何か不満をいってくる人なのではないかと採用担当者にマイナスな印象を与えかねません。
例えば「社内の人間関係の悪さに嫌気がさして退職した」という理由を「連携を取りながらチームワーク良く、気持ち良い仕事をしたい」と言い換えるだけでも印象は全く異なり、チームをまとめてくれるポジティブな印象に変わります。
また「給与が安いので転職したい」という内容であっても「自身の努力や実績、経験などを含めて正当に評価してくれる会社で働きたい」と仕事に対しての真摯な姿勢を見せることで期待を持ってくれることでしょう。
新たな環境で、人間関係を構築しながら、前向きに新たなことにチャレンジする気持ちや意欲をエージェントに伝えていきましょう。
これまで何が不満だったのか、どうしたら解決できるか、今までのキャリアに対する考え方、今後やりたいことなどを整理しながら転職活動を行えば、きっと自身の納得がいく活動や就職ができると思います。
転職サイトのプロフィールを丁寧に書く
転職活動において、書類選考は面接に進むための最初のハードルといってもいいでしょう。
転職が初めての場合は書類の書き方が不十分なことから書類選考でつまずいてしまうことも多いようです。
企業側が望む書類選考の基本を理解し、転職サイトに登録するプロフィールを丁寧に書く事をしてみましょう。
書類は見やすく丁寧に書くことを心掛けましょう。
例えば写真が貼付されていない、明らかに他企業の使い回しと分かる志望動機、目に余る書き損じや不備などは、採用以前に社会人としての能力を問われますので気をつけたいものです。
中途採用の場合の書類選考においては「履歴書」と「職務経歴書」によって選考が行われることが一般的です。
転職サイトでは、プロフィールにかかれている職務経歴などの情報が履歴書や職務経歴書の代わりとなります。
ただし選考が進んだ段階で、改めて書類の提出が必要なケースもあります。
特に「志望動機」は採用担当者が最も先に目を通す項目と言われています。その次に「自己PR」です。志望動機や自己PRは書き方や伝え方を工夫し、丁寧に書くことで転職の成功率を高められます。
志望動機がまとまっているか、自身の魅力や想いが伝わる自己PRになっているかを意識しながら記入すると良いでしょう。
「職務経歴書」では採用側が重視する項目として多いのは、「仕事内容」「仕事への取り組み姿勢」です。
これまでの経験やあなたが取り組んできた事、仕事内容と姿勢、成果を分かりやすく伝えることができるようにまとめましょう。
どんな活躍ができるのか、いかに貢献ができるかここでしっかりとPRすることが重要です。
収入面の不安を減らすべく、在職中に転職活動する
転職活動ではブランクを減らし、収入面の不安を減らすことが重要です。
50代転職の難易度は二極化しており、転職先が「すぐ決まる人」と「いつまで経っても決まらない人」に二分されている状態です。実績、スキル、人脈の違いなど様々な要因が考えられます。
ブランクを気にせずに転職したい場合、在職中に転職活動をするか退職して失業手当を貰いながら転職活動に専念することがおすすめです。収入を気にせずに焦らずに就職活動ができます。
また、失業手当の支給期間が過ぎてしまうことも考慮すると、在職中に転職活動をするとより安心して転職活動をすることができるでしょう。
現在の職場で給与を得ながら転職活動することにより、焦らず多くの情報を収集しながら複数の会社を比較検討し、自分にとって最も条件がフィットした転職先を選ぶこともできるでしょう。
>>50代の転職成功率は5%!?|成功につながるポイントを紹介
4.まとめ
50代での転職を成功させるためにはどうすべきか、様々な角度から転職を成功させるポイントを徹底解説してきました。
50代転職を成功させる6つのポイントは以下の6点です。
- 社外人脈を増やし、知人の紹介で転職する
- LinkedInやWantedlyなどのビジネスSNSを活用する
- 求人数の多い転職エージェントに無料相談する
- 前向きな転職理由であることを転職エージェントに伝える
- 転職サイトに登録するプロフィールを丁寧に書く
- 収入面の不安を減らすべく、在職中に転職活動する
さらに、転職活動を進めた上で転職に厳しい現実を感じた場合は、副業を視野に入れることも考えると良いでしょう。
この記事を参考にすれば、あなたのキャリアが求められている場所や、今までよりあなたの能力を活かすことができる新たな環境や仕事に出会えるかもしれません、さまざまな角度や広い視野で副業も検討してみることもおすすめです。
どのような場所であっても、意欲を持って会社の発展や成長に貢献できる人材であれば、チャレンジする機会は無限にあります、ぜひ前向きに転職をしてみてください。