50代で転職が決まらずに悩んでいる人も少なくないでしょう。

50代は転職者が少なく、転職が厳しい状況にあるとも言えます。転職を成功に導くには、この現状を理解した上で戦略的に転職活動を行う必要があります。

この記事では、50代転職活動の現状をポイントごとに説明した上で、成功の秘訣やおすすめのエージェントについて紹介します。

この記事の監修:勝田健氏
スタートアップ企業に特化した転職エージェントに従事。大手VCと連携し、累計約100名のCxOポジションに紹介実績あり。転職エージェント歴22年。スタートアップ業界の豊富な人脈(VC・起業家・CxO)と知見が強み。個人の「WILL」をベースとしたキャリア支援実績は累計2000名以上。スタートアップ企業の採用支援経験を活かし、自らも複業(結婚相談所・採用コンサルティング・新規事業起ち上げ支援)を実践。幅広い業界・サービスのビジネスモデルを熟知。

50代の転職の現状|50代の転職は相当厳しい

諸々の事情があり、転職しなければならない人も少なくないでしょう。しかし、50代の転職の現状を調べてみると、厳しい現状が伺えます。

まずは50代の転職を成功させるために、現状を理解しておきましょう。

50代は役職定年を迎える年代

50代は役職定年を迎える年代です。役職定年とは、55歳定年制から65歳定年制への移行や1990年代以降の職員構成高齢化によるポスト不足の解消などを目的に導入された制度です。

人事院の「課長級の役職定年年齢別、年収水準別企業数割合」によると、50代の7~9割が年収が下がると回答しています。

役職定年が導入されている企業では、55歳で役員になっていない人は役職から下り、サポートにまわるのが一般的です。そのため、企業にとって50代の応募者に対し、採用したとしても用意できるポジションがないという事情があります。

管理職の求人が多くない

企業で働く50代には管理職としての役割が求められるのが一般的です。管理職としての求人は少ないため、年齢に合った役割の求人を見つけにくいという問題があります。

例えば、総合型のdodaと管理職対象ほJACリクルートメントを比較してみましょう。この2つの転職サイトにおける公開求人数を比べると、求人数に17万件と1.4万件と10分の1以上の差があります。単純に比較はできませんが、管理職の求人事態が少なく、少ない枠の争奪戦になっている現状が伺えます。

役員、部長、課長といったラインの管理職ポジションは内部で選出するのが一般的です。企業の多くが外部から採用しないことも多くなっています。

50代の転職者は増加傾向

総務省の「労働力調査」によると、50代の転職者はここ数年増加傾向です。その理由として、自身の体調不良や親の介護、長く働ける環境に移りたいなどが挙げられます。

多くの50代が転職活動を行っていると推測できるため、各ポジションの倍率は必然的に高くなるでしょう。

50代の転職率は他の年代に比べて低い

厚生労働省が発表する「転職入職率」(令和3年錠半期)の調査結果によると、50代の転職入職率の低さが分かります。50~54歳男性の転職入職率は2.4%、55~59歳男性は2.9%です。また、女性については、50~54歳は4.7%、55~59歳は4.0%と男性よりもさらに低い数値です。

35~39才男性の転職入職率が3.9%、同じ年代の女性が5.8%であることを考慮しても、50代の転職率の低さがうかがえます。

50代を対象とした求人は少ない

50代を対象とした求人は少なく、50代が応募できる求人は限られることが多いです。そのため、自分の好きな仕事に就けない、満足できる条件の求人がないという50代も少なくありません。

50代の転職を成功させる7つのポイント

50代の転職を成功させる7つのポイント

50代の転職を成功させる7つのポイントを紹介します。

ポイントを抑えて転職活動することで、希望する企業の内定を得やすくなるはずです。

経験の徹底的な棚卸しとキャリアプランニングを行う

キャリアプランニングに効果的な方法の一つとして、キャリアの棚卸しがあります。キャリアの棚卸しでは、今までのキャリアを振り返り、携わった業務やスキルについて洗い出します。それによって明らかにできた自分の経験や実績を基にして、自分にとってベストなキャリアを考えます。

棚卸しを行って自分は何ができるのかを明らかにした上で、今後のキャリア構築プランを立ててみましょう。

>>関連記事「スキルを棚卸し、かけ算で自分の価値を考える|「Yahoo!天気」生みの親が語るミドルキャリアの複業術」

スキルだけでなくマインドや柔軟性を伝える

転職活動ではスキルのみならず、企業の慣習や文化と合致するかも重要な評価項目です。どのような環境にも適応できる柔軟性がある人や、「郷に入れば郷に従え」を実践できる人であれば転職しやすいでしょう。

一方、何かと前職と比較する人や、前職のルールを持ち出してくる人は好まれません。転職する際は、転職先の企業に合わせようという姿勢が大切です。

条件に固執しない

前述のように、50代は応募できる求人そのものが限られています。その上、さまざまな条件に固執すると、応募できる企業がないという状況になるでしょう。

ポジションや勤務地、年収のこだわりを見直し、優先度をつけるようにしましょう。これにより条件を緩和できます。

「企業の利益にどのように貢献できるか?」や「企業が抱える課題をどういった点から解決できるか?」を重視するようにしてください。

リファラルでの採用を目指す

50代で転職活動を行う人のなかには、同じ業界で長く勤めていた人や、ビジネスにおいて豊富な人脈を築いている人もいるでしょう。求人サイトに掲載されている求人に絞らず、過去に構築した人間関係を活かしてリファラル採用を目指すのも一つの手です。

リファラル採用は企業側にとってもコストがかからない傾向にあります。採用広告を出したり、説明会を開催したりする必要がないため、人材を最小限の負担で採用できます。また、応募者についてよく知る紹介者がいることで、企業は応募者の人物像を把握しやすいといえるでしょう。

いきなり転職を目指さない

50代で転職する場合、正社員をいきなり目指すのではなく、業務委託や複業などからはじめるのも1つの手です。例えば、ITエンジニアに未経験から転職したい場合、クラウドソーシングサイトなどを活用として、複業で仕事をはじめてみるのも一つの手です。エンジニアとして業務委託であっても働いてみることで、企業から経験者としてみなされるようになります。

また、業務委託や複業で企業と繋がり、能力やスキルが認められ、評価されれば、正社員として雇用されるケースもあります。

専門性を活かす

取得難易度が高い資格を保有している人や、専門知識がある50代は、専門性が評価されて好条件で転職しているケースも多いです。例えば、エンジニアや弁護士、会計士などは50代でも専門性や実績が評価され、転職が決まりやすいです。

ただし、専門性の高い資格を持つ人であっても、転職活動において条件にこだわりすぎるのは良くないです。絶対に妥協できない条件を除いた上で、自分が企業に与えられる価値をまずは考えてみてください。

大企業だけでなく、中小企業やベンチャー企業を狙う

転職活動では応募する企業を大企業に拘らないことが重要です。大企業で得た知識やスキルは中小企業やベンチャー企業でも大いに活かせるでしょう。中小企業やベンチャー企業のなかには、大企業での勤務経験がある人材を歓迎する企業もあります。

転職では大企業に拘らず、中小企業も視野に入れることをおすすめします。

50代の転職 資格は取るべき?

50代の転職では希望する業界にもよりますが、資格にこだわる必要はありません。50代にはこれまでに積み重ねてきた経験やスキルを活かして働くことが求められます。資格を新たに取得するよりも、自分のこれまでの経験から何ができるのかを明らかにしていくことが重要です。業務経験や実績を振り返り、スキルを分解してキャリアプランを作ってみてください。

ただし、50代から新しい業界に挑戦してみたい場合は、その業界で働く上で必要とされる資格やスキルを取得しておく必要があります。例えば、50代からIT業界で働きたい場合は、ITパスポートなどの資格のほか、プログラミング言語についても学習しておく必要があります。

50代の転職でおすすめの転職サイト・エージェント

50代の転職でおすすめの転職サイト・エージェント

ここでは、50代の転職でおすすめの転職サイト・エージェントを紹介します。自分の年齢に合った転職サイト・エージェントを利用することで、募集条件に合う企業と出会いやすくなります。

ただし、どの転職サイトにもいえることですが、50代向けの案件が多いわけではありません。また、エージェントの場合、若年層を優先するケースがあることも留意しておいてください。

転職サイト1. ビズリーチ

ビズリーチには13万件以上の求人が掲載されており、非公開求人も充実しています。

ビズリーチはハイキャリア向けの転職サイトですので、高年収の企業や大手企業のマネジメント層のポジションなどの求人も多数あります。

これまでのキャリアに自信がある50代や、転職でスキルアップしたい50代の人は利用してみましょう。

転職サイト2. リクナビNEXT

リクナビNEXTは6万件程度の求人を扱っており、大手企業のみならず中小企業の求人も充実しています。

また、リクナビNEXTは条件で絞り込みしやすく、「年収400万円以上」「年間休日120日」「定時退社」といった条件指定も可能です。条件を登録しておくことで新着求人を受け取れたり、スカウト機能を利用できたりするので、転職活動を効率的に進められます。

大手企業から中小企業まで幅広く見たい人におすすめです。

転職サイト3. リクルートダイレクトスカウト

リクルートダイレクトスカウトは9万件近い求人を扱っています。ハイキャリア向けの転職サイトで「転職決定年収平均950万円以上」「年収800〜2,000万求人多数」が特徴です。

会員登録することで、非公開向け求人を参照できる他、スカウト機能も利用できます。また、管理職や経営層の求人もあるため、50代にマッチする求人も見つかりやすいでしょう。

転職サイト4. IX転職

IX転職はパーソルキャリアが運営するヘッドハンティング型の転職サイトです。大手企業や大手企業の経営に直結するような重要なポジションの求人も多数扱っています。また、自身の登録情報を特定の企業に公開されないよう設定できるため、現職や知人に知られずに転職活動を行えます。

ヘッドハンティング型のため自身で求人を探す必要はありませんので、登録しておいて損はないでしょう。

転職エージェント1. doda

dodaは7万~8万件の求人を扱っています。エリア問わず、誰もが知る有名企業から中小企業まで求人の種類も豊富です。

キャリアアドバイザーは豊富な求人のなかから、相談者に合った求人をプロの視点で提案してくれます。

転職エージェント2. リクルートエージェント

リクルートエージェントは20万前後の求人を扱っています。ほぼ全ての職種や業種、エリアをカバーしているのも特徴です。

リクルートエージェントは豊富なキャリアアドバイザーが多数在籍していますので、相談からはじめてみてもよいかもしれません。

転職エージェント3. JACリクルートメント

JACリクルートメントはハイクラス、ミドルクラス向けの転職サイトです。管理職や専門職の求人も多数扱っているため、好待遇での転職も期待できます。

JACリクルートメントには1,200人以上のコンサルタントが在籍しており、相談者のニーズに合わせた提案を行っています。

50代で転職に成功した事例

50代で転職に成功した事例を紹介します。

転職の成功事例を見ることで、参考にできるポイントや転職活動のコツが見えてくるはずです。

*en ミドルの転職「転職体験レポート」より引用

事例1 Aさん

Aさんはフロント・マンション管理として働いていました。しかし、社会情勢の変化により、出向してくる社員が増え、自分のポジションに不安を抱えるようになります。特に、親会社が自分と同じポジションの募集を出していることを知った際は、ショックを受けたといいます。

転職サイトには特徴があることを理解した上で、ミドル向きの転職サイトを利用しました。その結果、年齢よりも人柄や経歴が評価され、上場企業のフロント・マンション管理職のオファーをもらい、転職が決まりました。

事例2 Bさん

Bさんはコピーライターとして働いていました。業界全体が衰退傾向にあることも関係し、Bさんは提案が社内で却下されてばかりという状況に陥ったといいます。Bさんは社内の閑職にまわされたのをきっかけに転職を決意しました。

応募総数はオファーを受けた企業を含め約70社にも及ぶものの、面接に進めたのは内定をいただいた1社のみだったといいます。転職では「業種などを限定せず納得いく転職を」と思っていたようですが、結果的に同じ業界のコピーライターでした。

社外取締役に知人のいる会社で気に入ってもらい、1回の面接だけで新規部署立ち上げの責任者として内定をいただいたといいます。

事例3 Cさん

Cさんは証券会社で働いていましたが、今後のキャリアを考慮して転職を決意します。

Cさんは50歳を超える転職活動で、今までの経験を活かした職務でないと難しいことを認識したようです。

転職サイトは5つ登録したものの、30代~40歳程度の人を意識した求人は年齢制限で次のステップに進めませんでした。

そこで、Cさんはサイトの使い方や自身が置かれている状況を認識し、自分に合ったエージェントと定期的にコンタクトを取ることを心掛けます。

その結果、金融業界のインベストメントバンキング・M&Aの内定を獲得できました。

50代の転職が厳しい現状を打破するために必要な「キャリア自律の考え方」

50代の転職が厳しい現状を打破するために必要な「キャリア自律の考え方」

50代の転職活動では「キャリア自律」がポイントになります。キャリア自律とは、働く個人が自身のキャリアを主体的に考え、自らのキャリアに責任を持ち、キャリア形成に取り組むことです。

経済的低迷が続き、社会の変動が激しい昨今、新卒で入社した企業に依存し続けるのはリスクがあるともいえるでしょう。副業(複業)、ボランティアなど外部の刺激を得られる機会を積極的に作り、ジョブローテーションや社内公募制度など、人事制度によって機会を得る努力が必要です。

50代で転職活動を行う場合、企業で正社員となることにこだわらず、さまざまな働き方があることを踏まえた上でキャリアプランについて考えるとよいでしょう。例えば、企業に勤めなくても、個人事業主や経営者という選択肢があります。最近では、フリーランスと呼ばれる人達が増えてきており、企業とフリーランスを結び付けるプラットフォームも充実しています。

また、企業や公的機関などの組織に属して働きたい人は、正社員として入社を目指すのではなく、契約社員や業務委託で働きはじめるのも一つの手です。活躍が認められれば、正社員として採用されることもあるでしょう。

まとめ

50代で転職を目指す人は厳しい現実に悩まされているといえるでしょう。理想とする条件で内定を得られない、やりたい仕事の求人がないといった問題に直面するケースも少なくありません。

50代が転職活動で成功するためには、キャリアの棚卸しを行い、自分が企業にどのように貢献できるかを明確にすることが重要です。その上で、絶対に譲れない条件以外は条件を作らず、広い視野で転職活動を行うようにしてみてください。

また、50代のキャリア形成の選択肢として、企業への転職だけでなく、個人事業主や会社経営、契約社員などもあります。会社員に絞らず、自分にとってベストなキャリアを検討してみてください。