人材の流動性が高まり、転職する人も増えている今、キャリアチェンジを検討している人も多いでしょう。今まで築いたキャリアとは別のキャリアを選択することで、さらに自分の可能性が高まるかもしれません。
しかし、キャリアチェンジをしようとしても、わからないことが多くて一歩を踏み出せない人もいるのではないでしょうか。
キャリアチェンジとは「これまで経験してきた職務から未経験の職務内容へ変えること」です。キャリアチェンジには自分の市場価値を高められる、ポータブルスキルを得られるなどのメリットがあります。キャリアチェンジによって将来のキャリアの可能性を広げられるため、あらゆる年代から関心を集めているのです。
キャリアチェンジは未知への挑戦であり、意味を正しく理解し、ポイントを押さえて活動しなければ失敗に終わってしまうかもしれません。
この記事では、キャリアチェンジを成功させるポイントやメリット・デメリット、注意点まで幅広く解説しています。
記事の目次
キャリアチェンジとは
「キャリアチェンジ」とはどのような意味でしょうか。辞書では以下のように定義されています。
キャリアチェンジとは、 これまで経験・習得してきた職務内容から、 全く別の経験の無い職務内容へと変わる、移ること。職務内容や環境も異なるために、 これまで自分自身が経験・習得してきた技術が次に活かされない可能性がある。
Weblio 辞書
未経験の業界や職種への挑戦だけでなく、業界と職種のどちらかが新しい場合もキャリアチェンジに含まれます。
具体例を下記にまとめました。
業界も職種も未経験 | ・不動産の総務→IT企業のシステムエンジニア・塾講師→転職エージェントのキャリアアドバイザー |
未経験の業界・同職種 | ・生命保険会社の営業→建設会社の営業・人材派遣会社の経理→製薬会社の経理 |
同業界・未経験の職種 | ・制作会社のエンジニア→制作会社のコンサルタント・食品会社の広報→食品会社の商品企画 |
キャリアチェンジとキャリアアップとの違い
キャリアチェンジと混同されやすい言葉に「キャリアアップ」があります。キャリアアップを辞書で調べると、下記のように解説されています。
職業経験を積むこと、および、それによってより高度で専門的な技能を必要とする役職や職場へ迎え入れられること、などを意味する表現。希望する職場への就職や収入の増加などのために必要とされる。
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キャリアアップは、未経験の業界や職種に挑戦するキャリアチェンジと違い「経験がある業界・業種で役職や待遇などを現状より高めること」という意味です。
転職だけを指すのではなく、現職の担当領域を広げる、資格を取得して仕事に活かす、などもキャリアアップに含まれます。
年齢別 キャリアチェンジのポイント|理想の年齢は?
キャリアチェンジに適した年齢はあるのでしょうか。
未経験分野へ挑戦する場合、年代によってキャリアチェンジの方法や難易度が異なります。アプローチが違っても、年齢に関係なくキャリアチェンジは可能です。
ここでは、年齢別にキャリアチェンジのポイントを解説します。
20代のキャリアチェンジ
日本の新卒採用では、スキルや経験ではなく、価値観や考え方、性格などを重視するポテンシャル採用が多くの企業で取り入れられています。20代でキャリアチェンジしようとしている人は、十分な経験を得られない職場に不満を感じているケースも多いでしょう。
20代終盤から30代にかけて、即戦力性が求められるため、専門性や実績が評価を左右する要素にシフトしていきます。
20代は、30代以降もスペシャリストとして活躍できるかどうかを念頭に、しっかりとキャリアプランを考えてからキャリアチェンジに挑戦するとよいでしょう。
30代のキャリアチェンジ
株式会社リクルートスタッフィングの実態調査によると、コロナ禍に転職した人の約6割がキャリアチェンジを実施していました。
そのうち、30代では異業種・異職種へ転職した人が44.1%となり、異業種・同職種、同業種・異職種を含めると、キャリアチェンジの割合は高いと考えられます。
30代は、程よく社会経験を積み、一人ひとりが経験やスキルを有し始めた年代です。30代でキャリアチェンジを行う上では、今までに得た業界知識や業務知識を無駄にすることなく、それを横展開できるようなキャリアを選択することが重要です。
40代のキャリアチェンジ
株式会社リクルートスタッフィングの実態調査では、40代では異業種・異職種へ転職した人が46.2%となっています。
30代以上に業種・職種とも未経験の分野へキャリアチェンジが行われているとわかります。
40代で異業種・異職種へキャリアチェンジした人が4割以上いるものの、いままでの職種の専門性を武器に、未経験の業界を目指すのも得策です。
業界が変わっても職種が同じであれば、いままでのスキルや経験だけでなく、人脈も活用でき、即戦力として存在感を強めていけるでしょう。
50代のキャリアチェンジ
社会情勢が不安定な昨今では、50代でキャリアチェンジを強いられる可能性がゼロではありません。
50代ではどの年代よりも高い専門性やマネジメント能力を問われるため、40代と同じように、職種の専門性を活かし、異業界に挑むことでキャリアチェンジを実現できるでしょう。
キャリアチェンジのメリット
キャリアチェンジには、下記のようなメリットがあります。
- キャリア自律につながる
- 自分の市場価値を高められる
- 汎用性の高いスキルを得られる
それぞれ解説していきます。
キャリア自律につながる
キャリアチェンジは、キャリア自律の考え方につながります。
キャリア自律とは「自己認識と自己の価値観、自らのキャリアを主体的に形成する意識をもとに、環境変化に適応しながら、主体的に行動し、継続的にキャリア開発に取り組んでいること」です。(産業・組織心理学会)
キャリアチェンジは、未経験の業界や職種に新たに取り組むことで、将来に向けたキャリア開発のひとつと言えます。
キャリア自律についての詳細は、こちらをご覧ください。
>>関連記事:キャリア自律とは|実現に向けた5ステップから企業事例、メリットまで網羅
自分の市場価値を高められる
キャリアチェンジには、新たなスキルを身につけることで、自分の市場価値を高められるメリットがあります。
未経験の業界や職種のスキルや知識が得られるため、対応できる仕事の領域が広がります。
キャリアチェンジで得た新しいスキルをいままでの知識や経験に組み合わせることで、自分の希少性を高められるからです。
高い専門性をもつスペシャリストではないものの、特定の業界や職種に充分な知識と経験があり、他分野での経験もある人は、広い見解をもつ人材として重宝されるでしょう。
汎用性の高いスキルを得られる
キャリアチェンジで業界や職種が変わっても、汎用性が高いポータブルスキルはどのような環境でも活かせます。
厚生労働省ではポータブルスキルについて「業種や職種が変わっても持ち運び可能な能力」と定義しています。
キャリアチェンジはポータブルスキルを高められるチャンスです。新しい業界や職種で自分のポータブルスキルをどう使うかを考え、試行錯誤することで強化されるのです。
ポータブルスキルには下記のようなスキルが含まれます。
- 課題設定・遂行能力
- 問題解決能力
- 論理的思考力
- コミュニケーション能力
- 交渉力
経験がない新しい環境で成果をあげようとする場合、専門性をカバーするためにポータブルスキルをフルに使おうとするでしょう。そのため、今以上にポータブルスキルを高められるのです。
キャリアチェンジのデメリット
キャリアチェンジにはどのようなデメリットがあるでしょうか。下記の2つについて見ていきましょう。
- 収入が下がる可能性がある
- スキルや知識のキャッチアップに時間がかかる
収入が下がる可能性がある
キャリアチェンジでは、未経験の業界や職種で即戦力にはなり得ないため、収入は現職よりも下がる可能性が高くなります。
企業が未経験の人材を採用する際は、今後の成長性に賭けた投資となります。そのため、給与を低く設定しリスクヘッジを図るのです。
キャリアチェンジでは、年収アップのみならず現状維持も難しいことを理解し、どのくらいの下げ幅であれば許容できるかを考えておきましょう。
スキルや知識のキャッチアップに時間がかかる
キャリアチェンジ後に前職での経験や成功体験に固執していると、新しい業界や職種でのスキルや知識のキャッチアップに時間がかかる可能性があります。
キャリアチェンジの場合、未経験の業界や職種で新人としてのスタートです。
周りの社員はすでに専門スキルをもっているので、追いつくためには積極的にスキルや知識をキャッチアップしていかなければなりません。
いままでの常識や当たり前は通用しないと考えて、キャリアチェンジ後は過去のやり方や考え方に固執せず、柔軟性をもってスキルや知識を高めていく必要があります。
キャリアチェンジに失敗する人の3つの特徴
キャリアチェンジに失敗する人にはどのような特徴があるのでしょうか。
- 今の年収にこだわる
- 自分の強みを理解していない
- ネガティブな理由でキャリアチェンジを考えている
それぞれ解説していきます。
今の年収にこだわる
キャリアチェンジでは、業界・職種のどちらか、または両方が未経験のため、年収は下がる傾向があります。
企業側としては、未経験者にコストをかけるのはリスクと判断するからです。
今の年収にこだわると、キャリアチェンジで納得できる結果を得にくいでしょう。
キャリアチェンジでは、一時的に年収が下がったとしても、入社後の活躍次第で今の年収を超えられるかもしれません。
成果主義が浸透している昨今だからこそ、キャリアチェンジ後の可能性も広がります。
昇給の幅や機会については事前に確認し、将来的に自分の理想に近づけるかどうかを見極めておきましょう。
自分の強みを理解していない
キャリアチェンジでは、未経験でも企業の発展に貢献できる、自分ならではの強みをアピールしなければなりません。
企業が未経験者に期待するのは専門的なスキル以上に「人材としての強み」です。
しっかり自己分析を行い、チャレンジする業界や職種に活かせる強みを理解すれば、自分がどのように企業へ貢献できるかをアピールできます。
自己分析のポイントは下記です。
- どのような工夫で逆境を乗り越えたか
- 何で周囲からポジティブな反応や評価を得られたか
- 自分が大切にしている価値観は何か
自分の過去を振り返り「キャリアチェンジ後に活かせる強みや何か」を把握しておく必要があるのです。
ネガティブな理由でキャリアチェンジを考えている
「今の仕事に耐えられない」「上司や同僚と合わない」という理由からキャリアチェンジを考えるのは、失敗しやすい特徴のひとつです。
キャリアチェンジでは、企業側が入社後をイメージしやすい具体性のある志望動機を伝えましょう。
ネガティブな理由で行動すると、現状から逃れたいのが本心のため、はっきりした動機をもって挑んでくる他の候補者に比べて、主張が弱くなってしまいます。
現職に対してネガティブな状況では、現状から逃れたいという焦りが先行すると判断力が鈍り、キャリアチェンジ後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しかねません。
キャリアチェンジを考えるなら、将来を見据えた上で、どのような目的や理由で挑戦したいのかを整理して挑む必要があるのです。
キャリアチェンジを成功させる5つのポイント
キャリアチェンジを成功させるための、5つのポイントを解説していきます。大切な内容なのでぜひご覧ください。
志望する業界・業種のリサーチをする
キャリアチェンジを成功させるには、志望する業界や業種の念入りなリサーチが重要です。
企業のホームページや転職エージェントの情報だけでなく、メディアの記事や口コミサイトなどにも目を通しましょう。
リサーチのポイントは下記です。
- マーケットの規模と推移
- 業界全体の構造
- 企業に対する評判や口コミ
- 社員のインタビュー
キャリアチェンジ後にミスマッチとならないように入念なリサーチを行い、自分の希望と合っているのかを判断するのが成功のポイントです。
今までのキャリアの棚卸しをする
キャリアチェンジを目指すとき、事前にキャリアの棚卸しをしましょう。今までの具体的な経験を洗い出し、自身がどのような知識やスキルを得られたのかを明確にすることで以下のような効果がきたできます。
- キャリアチェンジを目指す軸を確立できる
- 目標が明確になり効率よく活動できる
キャリアの棚卸しで、自分の過去を客観的にとらえることで、将来の方向性が見出しやすくなります。
目標が定まれば、目の前のさまざまな情報に惑わされることなく、自分にとって必要な行動を取れるようになり、効率を上げられるでしょう。
キャリアの棚卸しは、希望するキャリアチェンジを実現させる大切なプロセスなのです。
中長期的なキャリアプランを考える
キャリアチェンジでは未経験の業界や職種に挑む理由について、根拠を持って説明できるようにまとめておかなければ、企業を納得させられる強い主張になりません。
根拠のある理由を述べるためには、中長期的なキャリアプランが重要です。
キャリアプランを明確にすることで、キャリアチェンジがどこに位置し、何を達成するための手段なのかを認識できるからです。
キャリアプランを考えるために、下記の4つについて洗い出すとよいでしょう。
- 現状の把握
- 5年後・10年後の理想像
- 人生で成し遂げたいこと
- 達成までの道のり
キャリアチェンジをとおして、自分のキャリアプランを達成しようとする姿勢は、企業からも評価されやすくなります。
キャリアチェンジの先にある将来をイメージしておくことが成功につながるのです。
ポータブルスキルを身につける
汎用性が高いポータブルスキルは、キャリアチェンジ後にも活かせるため、身につけておきたいスキルです。
キャリアチェンジでは専門的なスキルや経験よりも、新しい環境に対応できるポータブルスキルが評価につながります。
ポータブルスキルには、前章で述べたスキル以外に、マネジメント力やプレゼンテーション力、語学力なども含まれます。
語学力であれば、TOEICで十分なコミュニケーションがとれるレベルとされる860点以上を獲得し、キャリアチェンジに向けて日頃から準備しておくことが大切です。
志望動機を明確にする
キャリアチェンジでは、志望動機を明確にする必要があります。未経験の業界や職種に挑む理由について、根拠を持って説明できるようにまとめておきましょう。
未経験者が採用されるためには、経験のある候補者以上に、企業を納得させられる強い主張が必要です。
企業側は未経験の候補者に対して「いまの仕事が嫌で辞めたいのでは?」「新しい仕事を本当に理解しているか?」というネガティブな疑問を持ちます。
それらを払拭できるように、自分のキャリアプランにおいて、なぜキャリアチェンジが必要なのか、何を達成したいのかをまとめましょう。
志望動機には、上記に加え、業界や職種が違ってもいままでの経験やポータブルスキルが活かせることもアピールするとよいでしょう。
【例文】キャリアチェンジを考えるときの志望動機
キャリアチェンジではどのような志望動機を用意すればよいでしょうか。
業界・職種とも未経験のキャリアチェンジにおける志望動機を、例として紹介します。
・不動産営業からIT営業へ
前職では不動産会社の営業として、5年勤務しておりました。日々さまざまなお客様と関わり、コミュニケーション能力や対応スキルを磨きました。営業として培った経験をIT業界で生かしたいと思い、貴社を志望します。
商談の際にはまずお客様のお困りごとを詳しく聞くことを心がけ、お客様に最適な解決法を提案してきました。中小企業の代表の方との商談の機会が多く、そこで身につけた目上の方とのコミュニケーション能力は、貴社でも活かせると自負しております。
もともとIT業界への興味があったため、ITパスポートを取得しました。IT業界は未経験ですが、今までの経験を活かしながら貴社の即戦力として活躍できるよう努力します。
異業界・同職種、同業界・異業種でも例文はこちらの記事で紹介しています。
>>関連記事:40代転職で勝つための志望動機 | 書き方のポイントや例文を紹介
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サポート | ・同世代のキャリアコーチがマンツーマンで伴走支援 ・各領域のプロに直接質問し放題で、複業の着実な駆け出しをサポート ・人材・キャリアのプロが監修 |
まとめ
この記事では、キャリアチェンジを成功させるポイントやメリット・デメリット、注意点まで幅広く解説してきました。
キャリアチェンジは、年代によってアプローチが異なるものの、年齢に関係なく実現が可能です。キャリアチェンジのメリット・デメリットを理解し、自分にとって正しい選択なのかを検討しましょう。
キャリアチェンジに失敗する人の特徴を理解し、成功するポイントをしっかり押さえた上で、入念に準備することが大切です。
志望動機はキャリアチェンジを実現するための重要な要素となります。
キャリアチェンジを成功させ、将来のキャリアの可能性を広げましょう。