転職市場において転職に成功した人の平均年齢は年々上昇傾向にあります。
dodaが実施した調査によると転職成功者の年齢のうち、40歳以上の割合は増えつつあります。
しかし、40代の転職を成功させるのは決して簡単ではないので、ポイントを押さえないと望むキャリアを築けません。
40代が転職を成功させるためにはどのように行動すればよいのでしょうか。
今回の記事では、以下のポイントについて徹底的に解説していきます。
- 40代の転職の現実
- 40代の転職が現実的でない理由
- 40代の転職攻略ポイント
- 40代で転職を成功させるための手段
記事の目次
40代の転職の3つの現実
実際、40代の転職の現実はどのような状況なのでしょうか。40代の転職活動状況について3つの現実を解説していきます。
40代の転職で年収が上がらないのは60%
平成30年雇用動向調査結果によると、転職入職者の賃金変動は40〜44歳で41.4%、45〜49歳で38.9%の人が増加と回答しました。
(転職入職者:常用労働者のうち調査対象期間中に事業所が新たに採用した者で、入職前1年間に就業経験のある者)
40代の転職入職者の約40%が「賃金は増加した」と答えた一方で、残りの60%は「変わらない」または「減少」と回答しました。理由として、企業は採用の際に、候補者の年収とスキルをベースに会社の評価基準と照らしあわせるからです。
転職者が応募した企業と同じ業界の仕事を経験していれば、採用する側も実力をイメージできます。
しかし、異業種からの転職だと、転職先の業界での実務を経験していないため、実力が予想と異なる場合も想定されます。
会社の評価基準を満たしていなければ転職しても賃金は増加しないため、「変わらない」または「減少」といったケースが発生するのです。
転職すると入社するタイミングによって、初年度だけ年収が下がる場合もあります。
在籍期間を満たしていないと賞与が満額支給されないことがあるので、結果として賃金が「変わらない」または「減少」という結果になってしまうのです。
転職すると年収が上がると思われがちですが、実際のところ40代の転職者の半分以上は年収が減少しています。
40代の転職入職率は男性約5%、女性約12%
転職入職率は常用労働者数に対する転職入職者数の割合の割合で、働いている人のうちどれくらいの人が転職しているのかを指し示す指標です。
平成30年雇用動向調査結果によると、以下が40代の年齢階級別転職入職率の割合です。
40〜44歳 | 45歳〜49歳 | |
男性 | 5.9% | 4.7% |
女性 | 13.5% | 11.3% |
40代の転職入職率は平均すると男性で約5%、女性で約12%です。
数値だけでみると女性の割合が高いですが、女性の入職率を一般労働者とパートタイム労働者で分けると、パートタイム労働者の方が割合が多くなります。
男女問わず40代の一般労働者の転職入職率は低いと言えます。
転職入職率の値は20代や30代から下がるので、各年代と比較しても40代の転職成功率は低い割合です。
>>40代の転職の成功率の関連記事「40代の転職成功率はおよそ5% | 成功率をあげる7つのステップまで解説」
40代は経営への不信感が高まる傾向がある
40代の転職者が前職を辞めた理由として以下の理由が挙げられます。
- 給与
- 待遇
- 職場の人間関係
- 会社への将来
- 会社都合
それに加え、40代は「経営への不信感」も高まる傾向です。
経営への不信感が高まる人の特徴は2つあります。1つ目は「愛社精神が強いこと」です。
在籍期間が長く愛社精神がある社員ほど、以前の方針と今の方針に違いがあると経営に不信感を抱きやすくなってしまいます。
2つ目は「主体者意識が強いこと」です。
40代になると役職が上がる人も多く、経営陣との距離が近くなります。
全員が同じ方向を向いていればよいのですが、経営陣の方針と自分の考えが異なると「このままずっと会社に勤めていてよいのか?」と考えはじめます。
しかし、企業の経営方針は簡単に変わりません。会社の方針と自分の考えが乖離し、価値観がすれ違いはじめた結果、転職にいたってしまう人が多くなります。
40代の転職が現実的ではない7つの理由
40代の転職が現実的ではない理由は以下の7つです。
- 転職希望者の理想が高くなりがち
- 40代の求人がそもそも少ない
- 求められる条件が高くなる
- 未経験職種には挑戦しづらい
- 若手のポテンシャル採用にはかなわない
- マネジメント経験やスキルが必要な求人が多い
- 即戦力が求められる
以下解説していきます。
1、転職希望者の理想が高くなりがち
40代の転職希望者のなかには、理想が高いことが転職を阻むケースが多く見られます。
なぜなら、転職先を選ぶときに「条件」で企業を判断するからです。
40代は役職につく人が増え、若手社員と比べると年収は高い傾向です。
40代の転職希望者は現職の年収をベースとするので、在籍企業よりも「好条件・高待遇」の転職先を求めます。
転職では必ずしも全ての条件が叶うわけではありません。
40代は転職成功率が低いため、譲れない条件を複数設定してしまうと選択肢が狭まります。
譲れない条件と妥協できる条件を決めておくことが大切です。
2、40代の求人がそもそも少ない
20代や30代と比較すると、40代を対象とする求人は多くありません。
多くの企業では、柔軟性があり、長く勤めてもらえそうな人を採用したいことから、若い社員のニーズが高まっています。
40代を対象とした募集もありますが、多くはマネージャーをはじめとした管理職にあたるポジションです。
企業によっては優秀な40代がいたとしても「長期的なキャリア形成を考えると若い社員の方がよい」と考える企業もあるため、40代を対象とする求人は少ない傾向があります。
3、求められる条件が高くなる
40代になると採用時に求められる条件が高くなります。
40代になると自分が部下を教育する立場になるため、特定の領域に特化した知識だけでなく、マネジメントなどのどの職種にも求められるスキルなど、多くのスキルが必要です。
また、企業は40代を採用するとき、自社に足りないスキルを持った人材を求めています。
自社が必要とするポジションにより近い能力を持った人材を探そうとすると、必然的に条件にマッチする人材が少なくなり、求められる条件が高くなるのです。
4、未経験職種には挑戦しづらい
40代での転職は経験者が求められる傾向にあるため、未経験職種に挑戦しづらく、多くの時間や労力が必要とされがちです。
40代は職種によっては未経験での転職も可能ですが、採用された場合、教育担当が自分より年下になる可能性があります。
年下の教育担当に教わるとなると、どうしても抵抗があり、わからないことを素直に聞けない人が少なくありません。
その結果、教える側も話しかけづらいと感じます。
5、若手のポテンシャル採用にはかなわない
これからの成長可能性が高く、長い期間自社に貢献してくれる可能性やカルチャーフィットを重視して採用する「ポテンシャル採用」を多くの企業が新卒採用などに取り入れています。
40代と比べると若手は経験やスキルを十分には備えていませんが、企業はこれからの成長を見越してポテンシャル採用を行っています。
40代で転職を考え、採用担当者とコミュニケーションをとる際には、自分の経験や知識だけでなくマインドがフィットしていることを伝えることが重要です。
6、マネジメント経験やスキルが必要な求人が多い
40代の転職市場では転職希望者に対して、「マネジメント経験」や「スキル」を求める求人が多い傾向にあります。幹部候補やマネージャーの募集では、社内メンバーやプロジェクトのマネジメントの経験が必要になります。
またプレイヤーやマネージャーを問わず専門スキルは必須です。両方の要素を備え持つ人材が転職市場では重宝されます。
7、即戦力が求められる
40代の転職では、即戦力が求められるケースが多くなっています。
これは、中長期にわたって築いてきたスキルや経験、知識を活用して、自社のリソース不足を早期に解決したい会社が多いからです。
まずは、自分が積み上げてきたキャリアを分解し、どのようなスキルがあるのか、どのような強みがあるのかを分析し、自分が活躍できるのはどんな会社なのかを検討してみましょう。
その上で、求人内容や転職エージェント、採用担当者との会話を通して、転職を検討している会社がどのような課題を抱え、どのようなスキル、マインドを持った人を求めているのかを俯瞰して分析することで、40代でも転職を成功させる可能性は必然と高くなります。
40代で転職を成功させる5つの攻略ポイント
上述のように、40代の転職は成功率が低く、希望する企業に入社するのが難しい側面もあります。
しかし、ポイントを押さえれば40代でも転職ができ、望むキャリアを手に入れられます。
転職を成功させるためには以下の5つのポイントを参考にしていきましょう。
自分の強みやアピールポイントを明確にする
転職活動を始める前に、自分の強みやアピールポイントを明確に把握する必要があります。
誰にでも強みやアピールポイントは必ずあるので、自分で把握していない人は今まで仕事で経験してきたことを洗い出していきましょう。
経験してきたなかで「意識していなくてもできたこと」があったら強みやアピールポイントになります。
業務のなかの些細なことでも自分の強みやアピールポイントになるのです。
例えば、自分は意識していなかったのに他の人に「会議の資料作りがきれい」と褒められた経験があれば、十分強みやアピールポイントになります。
「なぜ意識していなくても資料作りをきれいにできたのか?」を深堀りして過程を振り返ることで、強みやアピールポイントを言語化できるのです。
強みやアピールポイントは面接でも聞かれる質問項目なので、事前に把握しておくと面接のときにも迷わず答えられます。
別の会社でも活かせるスキルを身につける
転職を成功させるために、自社だけではなく別の会社でも活かせる「ポータブルスキル」を身につけるとよいでしょう。
ポータブルスキルを身につけることで、転職したあとも即座に転職先の業務に対応できます。
ポータブルスキルとは、業種や職種、時代背景にとらわれず、どんな環境でも活かせる汎用性の高いスキルです。
ポータブルスキルは以下のような例があり、意識して取り組むことで身につきます。
- 分析力:アイデアや解決策を提案できるように調査、解釈するためのスキル。小さな物事でもテーマを設定して分析することで身につく。
- 傾聴力:相手の話に耳を傾け、理解するスキル。相手の目を見て話したり、適度に相槌を打ったりするのを意識するとよい。
- 忍耐力:直面した課題や困難に耐えるスキル。やると決めたことに集中して取り組むことで成長できる。
専門的なスキルの土台になるので、ポータブルスキルを身につけることで別の会社でも成果をあげられるのです。
転職の動機や目的を明確にする
転職の動機や目的を明確にすることで、転職の軸が定まり、自分が転職すべき会社がわかります。以下のように転職の動機や目的は人によってさまざまです。
- 年収を今より上げたい
- 待遇を良くしたい
- 新しいことに挑戦したい
軸を決めないで転職活動すると、内定が出て転職するかどうかを決めるときに判断がブレてしまいます。
面接官が知りたいのは、転職を考え始めてから結論に至るまでの過程です。
客観的に面接官が納得のいく転職理由を伝えることで、内定に近づきます。
応募する企業を深く分析する
自分の強みや転職の目的を明確にしたら、応募する企業のことをよく調べ、深く分析していきます。
先にも述べたように、40代の転職は成功率が低いです。書類選考も通過しづらいため、1社1社の選考が重要になります。
応募する企業によって志望動機や職務経歴書のフォーマットを変えましょう。例えば、ベンチャー企業では以下の要素を持つ人材を必要としています。
- 思考と行動のスピードが速い
- 現場に飛び込める
- ストレス耐性が高い
- マルチタスク能力がある
- 一緒に未来を作る姿勢がある
40代でも自走して仕事に取り組む人材であれば、ベンチャー企業で活躍できます。ベンチャー企業を受ける場合は受ける会社の色に合わせつつ、上記のポイントをアピールすると良いでしょう。
これらの要素をアピールすることで「40代でもベンチャー企業で活躍できる人材」として採用担当に評価されるのです。
企業がどんな人材を求めているのかを分析し、求める人物像に合うようアピールポイントを変えていきます。
自分を偽るのではなく、あくまで「自分の一部分」としてアピールすることで、自分の価値観を大事にしつつ、企業とのマッチ度合いも高まります。
ニーズに合わせて新たな資格やスキルを得る
転職市場のニーズに合わせて新たな資格やスキルを得るのに挑戦するのもよいでしょう。
職種や業界問わず語学力を活かしたい人は「TOEIC860点以上」を目指すのがおすすめです。
英語活用実態調査2019によると、今後のビジネスパーソンにとって重要な知識やスキル
については82.6%が「英語」と回答しました。企業における英語スキルの目標水準は「英語で行われる会議で議論できる」が最も多い結果です。
このようにグローバル化に伴い語学スキルを求める企業は少なくありません。
TOEIC860点以上であれば受験者の上位5%のAランクになるので、「Non-Nativeとして十分なコミュニケーションができる」と評価されます。
その結果、転職において企業から必要とされる人材になるのです。
資格やスキルは職種・業界によって転職に有利になるものが異なります。
自分の目指す職種・業界で求められる資格やスキルを取得することで転職活動を成功できるのです。
40代が転職を成功させるための4つのステップ
40代の転職先を探す際にはさまざまな方法があるので4つのステップに分けて紹介します。
1つの手段にこだわるのではなく、複数利用することで新たな発見も見えてきます。
LinkedInやWantedlyなどのビジネスSNSを活用する
最近の転職活動では、ビジネスSNSを利用して転職を成功させたケースが増えています。
代表的なサービスは「LinkedIn」や「Wantedly」です。
「LinkedIn」とは、実名・顔出し登録が必要なビジネス特化SNSです。
人材ネットワーク構築や企業の採用、転職の目的で使われます。
全世界ではすでに7億4000万人以上のユーザーに利用され、Twitterよりも多く利用されています。
ビジネス用の情報収集ツールとして使うだけではなく、転職者は自分のスキルや経歴を登録することで、転職者の情報をみた企業からスカウトがくることも。
また「Wantedly」は、やりがいや環境を重視して企業と求職者をマッチングさせるビジネスSNSです。
従来の求人サイトのような給与や待遇面の記載がないのが特徴なので、自分の価値観にあった企業を見つけたい際におすすめです。
IT・Web系の職種を中心に求人が掲載されており、LinkedInと同じく転職者の情報を登録することで企業からスカウトがきたり、気軽に担当者にカジュアル面談のリクエストができます。
ビジネスSNSを使うことで企業と気軽にマッチングし、今まで知らなかった企業に出会えるチャンスが増えるのがメリットです。
社外の人脈を活用して紹介経由で転職する
社外の人脈を活用することで転職を成功させる方法もあり、紹介経由の採用手法として代表的なのは「リファラル採用」です。
アメリカでは約85%の企業で導入されていますが、日本では2015年頃から流行りはじめ、ベンチャー企業で多く導入されています。
リファラル採用では、入社する段階で社内に知り合いがいるので心理的にも安心できます。
また、選考を受ける前に会社の魅力や業務について聞けるので、ミスマッチが少ないのもメリットです。
デメリットとして、リファラル採用で転職した人は紹介してもらった立場のため、採用してもらった会社を辞めづらいと感じる可能性があります。
転職サイトに登録する
転職サイトは年代別の求人を掲載しているだけでなく、業界ごとに特化しているものもあり、登録することでさまざまな求人情報を見られるのが特徴です。
自分の希望と経歴にあった転職サイトに登録することで、転職の成功率がアップします。
転職サイトのなかにはスカウト機能があるサービスもあり、代表的なのは「ビズリーチ」です。
ビズリーチでは転職サイトで求人情報を確認する以外にも自分の情報を登録することで、企業や転職エージェントからスカウトがくる機能があります。
40代の自分の市場価値を知るためにも「ビズリーチ」に登録して、どんな企業からスカウトをもらえるのか見てみましょう。
転職エージェントに相談する
転職活動の進め方がわからず、1人での転職活動に不安がある人は「転職エージェント」に相談するのもおすすめです。
転職エージェントでは、キャリアアドバイザーが「転職希望者」と「企業」の間に入ってやりとりを仲介してくれます。
転職エージェントは主に以下のサービスを提供しています。
- 転職希望者への求人の紹介
- 履歴書や職務経歴書などの応募書類の添削
- 企業への条件交渉
- 転職に関する客観的なアドバイス
40代の転職活動は長期化しやすく、精神的にも追い込まれてしまう可能性もあります。そんなときにキャリアアドバイザーに支えてもらえたら心強いですよね。
自分にあった転職エージェントと出会うには1つのサービスだけではなく、複数サービスを利用することで最適な転職エージェントが見つかります。
自分が希望する領域が得意な転職エージェントを選んで、転職活動を成功させましょう。
まとめ
40代での転職活動は成功率が低く、自分が納得のいく企業に転職するのは簡単ではありません。
それでも、正しい攻略方法や手段を活用することで、自分が思い描くキャリアに近づけます。
40代での転職活動は時間が経つほど不利になります。現在の会社に残るか転職するか早めに見極めて行動に移すことが大切です。
転職を検討している人は40代での転職の現実を念頭に置きつつ、まずは今自分が必要なこと、できることからはじめて転職活動を成功させましょう。