正社員の副業を認める企業が増えつつあります。従業員の副業を全面容認、条件付き容認する企業が増える一方で、約半数の企業は正社員の副業を禁止しているという調査結果が出ています。

この記事では、なぜ企業は従業員の副業を禁止するのか、その理由について具体的にみていきます。

なぜ企業は副業を禁止するのか

なぜ企業は副業を禁止するのか

ここからは、企業が従業員の副業を禁止する理由について、具体的にみていきます。従業員の副業は企業にとって、どのようなリスクがあるのでしょうか。

情報漏洩のリスクがある

従業員が副業をすると、所属している会社以外の企業と仕事をすることになるため、本業の情報が漏洩するリスクがあります。たとえ本業とまったく関係のない業種であっても、副業先の関係者のなかに本業の競合他社に所属している人がいるかもしれません。

また日常会話のなかでうっかり本業についての話題をしたとき、漏らしてはいけない情報について話すリスクもあるでしょう。所属している会社の影響が及ばないところで情報漏洩のリスクがあるため、副業を禁止している企業もあるのです。

従業員の労働時間が長くなり、本業に差し支える

従業員が副業をすることで本業にネガティブな影響が及ぶ可能性があります。

例えば、本業以外に仕事をすると従業員あたりの労働時間が長くなります。時には睡眠時間や余暇の時間を削って副業をする人もいるかもしれません。副業をすることによって労働時間が長くなれば、体調を崩すリスクも高まります。

このように労働時間が長くなることで、間接的に本業へネガティブな影響が出るリスクがあるのです。

企業のイメージダウンにつながる

バーチャルオフィスを運営する株式会社ナレッジソサエティが行った副業に関する調査によると、副業をする理由で最も多いのが「収入の不足を補うため」でした。

つまり従業員に副業を認めるということは「自社の給料が少ない」ことを証明してしまう、と企業が考えている可能性があります。企業側からすると適正な給料を支払っているとしても、従業員の副業を認めることで企業の意図とは異なる認識が広まる可能性があるのです。

自社ではできない経験をするために副業をしたい人もいますし、趣味と実益を兼ねて副業をしたい人もいるでしょう。しかし副業に関するさまざまなアンケートの結果、副業をしたい理由の第1位が「収入を増やす・補う」であることは事実です。

自社の給料に関するネガティブで誤った情報を広めたくない、と企業が認識しているために従業員の副業を禁止している可能性もあるでしょう。

副業禁止は就業規則で確認しよう

正社員であっても、就業規則で副業が認められていれば副業をすることは可能です。

そのため「正社員だから副業はできない」と諦めるのではなく、まずは自社の就業規則を調べることをおすすめします。

パーソル総合研究所が行った2021年3月に行った「第二回 副業の実態・意識に関する定量調査」(上図)によると2018年から2021年にかけて、従業員の副業を認めた企業は3.8ポイント増えています。

過去に就業規則を確認したときは副業が禁止されていた場合でも、就業規則が改正されて副業が可能になっているかもしれません。

まずは自社の、最新の就業規則を確認しましょう。もし最新の就業規則でも副業が禁止されていた場合は、副業を始めるタイミングは「今ではない」ことになります。

副業によって収入が増えると所得に応じて変動する税金の金額が変わるため、会社に本業以外の収入があることがわかる仕組みになっています。就業規則に反して副業したことが会社にわかってしまうと懲戒処分の対象になり、職を失う恐れもあるため、くれぐれも就業規則に反する行動はしないよう注意が必要です。

副業禁止はおかしい?違法の可能性も

日本国憲法第22条で、国民には職業選択の自由が保証されています。この原則に則ると本業の就業時間以外に従業員が副業をしようと、所属している企業がコントロールしてはいけないことになります。

就業規則で副業を禁止している企業が、従業員から「憲法違反だ」と言われて訴えられた場合、会社は負ける可能性がある、といえます。実際に副業を認めた企業からは「禁止するべきものではない」という意見が上がってきています。

企業側も徐々に副業を認める動きが出てきたなかで、憲法違反の指摘を受けるリスクを把握したのかもしれません。今後、どのくらいの企業が従業員の副業を解禁するのか、注目したいところです。

副業がバレにくい5つの抜け道

ここからは副業がバレにくい5つの抜け道について紹介します。ただし「バレにくい」というだけで「絶対にバレない」わけではないことは理解しておいてください。

副業で稼いだ分の住民税は自分で支払う

副業収入を得た場合、金額の多寡にかかわらず、住民税を納付する必要があります。住民税は下図のような仕組みになっています。

住民税を構成する要素のうち「所得割」は所得金額が変わると、納付する金額も変わる仕組みです。そのため副業収入があった場合は、増えた収入について申告し、住民税を納付しなくてはいけません。

増えた収入についての住民税を自分で申告し、納付することを「普通徴収」といいます。普通徴収で住民税を納付すると、所得が変動したことは所属している会社には伝わりません。

しかし普通徴収を行わず、従業員に代わって住民税を納付している下図の「特別徴収義務者」のみに住民税の金額を通知する自治体も出てきています。

住んでいる自治体の仕組みが変わり「普通徴収」が不可能になった場合、副業をしていることが所属している会社に伝わるリスクがあることは認識しておきましょう。

現金払いのみの副業に絞る

現金払いの副業の場合でも、所得税や住民税を納めなくてはいけません。しかし書類が残りにくいことから、所属している会社に副業をしていることがバレにくいといえます。

ただし副業収入が年間で20万円を超えると、現金払いであっても確定申告が必要になりますし、20万円に満たなくても副業収入に応じて住民税を納付する義務はある点は、認識しておいてください。

人目につかない仕事を選ぶ

人目につきにくい仕事の場合、周囲の人に見つかるリスクが少なくなるために会社に副業がバレにくいといえます。人目につきにくい仕事とは例えば、自宅でできる仕事のほか、夜間に人の出入りのない建物の警備員、部外者が立ち入ることがない工場などでの仕事です。

ただし人目につきにくい、というだけで、絶対に会社にバレないわけではない点は注意が必要です。

副業について家族以外に口外しない

副業が会社にバレないようにするには、まず「漏らさない」ことが重要です。家族以外の人に、副業していることを口外しないようにしましょう。

家族にも副業について家の外で話すことのないよう、釘をさしておく必要があります。可能であれば、話す家族も配偶者のみにするなど、最小限にとどめることをおすすめします。

本業には絶対に影響を及ぼさない

会社に副業していることがバレないようにするには、本業に良し悪し関係なく影響を及ぼさないことが絶対条件です。ポジティブな影響なら問題ないだろうと思いがちですが、就業規則で副業が禁止されている場合は、良い影響を本業に与えたとしても就業規則に違反したことになるため、懲戒処分の対象となるでしょう。

良い影響を与えたことは結果論であり、違反した事実は変わりません。副業が会社にバレたくない場合は、絶対に本業に影響させないようにしましょう。

本業に影響させないバレにくい副業5選

ここからは本業に影響させない、バレにくい副業を5つ紹介します。副業は禁止されていないけれど、副業していることを知られたくない場合に参考にしてください。

物販(フリマアプリなど)

自宅でできるフリマアプリを活用した副業は、周囲にもわかりにくいため、バレにくい傾向があります。また副業する時間を自分でコントロールできることから、本業への影響も出にくいのです。

出品するときの説明に、配送できる日時を明記しておくとクレームも受けにくいでしょう。自宅にあるものを売ることから始められるため、不用品を処分できるメリットもあります。

投資(株式やFXなど)

株式や外国為替に投資する副業も、本業には影響が出にくいでしょう。自宅のパソコンやスマートフォンで取引できるため、バレにくい副業といえます。ただし投資で一定の収入を得るには、深い金融の知識とまとまった資金が必要です。

さらに元本が保証されていないため、損失を被るリスクもあります。損失が出るリスクとバレにくく、本業に影響しにくいリスクを考えたうえで取り組むことをおすすめします。

アフィリエイト(ブログ、SNSなど)

ブログやSNSを活用して企業の商品やサービスを宣伝し報酬を得るアフィリエイトは、本業に影響が出にくく、かつ会社にもバレにくい副業のひとつです。

空いた時間に投稿を作成しておけば、閲覧したユーザーが商品を購入したり、成果となる行動をしたタイミングで報酬が発生するため、本業に影響が出にくい点では他の副業よりも有利といえます。

アルバイト(単発バイト、フードデリバリーなど)

1日だけ、数時間だけ、といった単発のアルバイトも本業に影響が出にくく、会社にもバレにくい副業といえます。1日だけであれば、他の人の目に触れるリスクを減らすことが可能です。

体力や体調面の管理もしやすくなります。フードデリバリーの副業を単発でする場合は、会社関係者の自宅や関係先に配達しないようにエリアを限定させることで、バレるリスクを減らせるでしょう。

Webライター(本業の資格が生かせる。ただし情報漏洩に注意)

Webライターの仕事は基本的に在宅で可能なため、会社の人にはバレにくい副業です。しかも本業の知識やスキル、資格を活かして記事を執筆できるメリットもあります。

ただし執筆する記事の内容によっては情報漏洩のリスクに配慮が必要です。さらにタイピング速度が遅い場合は、仕上げるまでに時間がかかるリスクもあります。本業に影響させずにWebライターの副業をする場合は、自分のスキルや経験を踏まえたうえで、作業負荷が軽いものを選ぶことが大切です。

本業に影響させない副業のコツ5選

本業に影響させない副業のコツ5選

ここからは、本業に影響させない副業のコツを5つ、紹介します。これから副業を始める人、副業を検討している人はぜひ参考にしてください。

生活リズムを崩さないこと

副業をするにあたって本業に影響させないためには、これまでの生活リズムを崩さないことが重要です。新たな習慣として副業を組み込んでしまうと、その習慣に慣れるまでの間、心身に少なくない負担がかかってしまいます。

そのため、副業は「空いた時間」に行いましょう。余暇のための時間や、通勤といった時間を活用して副業を行うと、生活リズムを崩さずに済みます。くれぐれも「無理なスケジュール」で副業をすることは禁物です。

無理せず続けられること

副業を決めるときは「無理せずに続けられること」を優先して仕事を選びましょう。無理をすると、本業にも影響を及ぼしてしまいます。

副業が会社に認められているとしても、副業をすることで本業に良くない影響が出てしまっては本末転倒です。会社に「副業したことの良くない前例」として認知される恐れもあります。自分が簡単にできることは、無理せず続けやすいこと。「簡単にできるかどうか」で副業を決めるといいでしょう。

余暇時間でできること

本業に影響させないためには、心身のバランスを崩さないことが重要です。具体的には「余った時間でできること」が、本業に影響させない副業のポイントになります。

もちろん自分の心身をリラックスさせる時間を削ってはいけません。リラックスする時間も確保したうえで、余った時間を副業に当てましょう。その時間が確保できていない場合は、副業を始めるタイミングは今ではない、という判断になります。余った時間ができるよう、生活リズムをまず調整してみてください。

本業の情報漏洩のリスクがない副業を選ぶこと

本業にかかわるあらゆる情報を漏らさないために、情報漏洩のリスクがない仕事を選びましょう。収入を増やそう、スキルアップしようとして副業を始めたのに、本業の情報漏洩をしてしまったために職を失う事態になっては元も子もないからです。

万が一にも本業の情報を漏らすリスクのない仕事を、副業として選びましょう。

家族の理解を得ること

副業をするにあたっては、家族の理解を得ることが重要です。家族と過ごす時間を副業に当てることがあれば、家族と過ごす時間が減ってしまうためです。

副業を始めたことで、家族も少なからず影響を受けます。全面的に副業に賛成し、応援してもらうためにも副業について、家族の理解を得る努力をしてください。

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まとめ

今回は企業が従業員の副業を禁止する理由について、データに基づいて考察しました。企業が従業員の副業を禁止する理由は、一定の理解ができるものではあるものの、憲法違反になる可能性も秘めています。

従業員の収入を補填するために、副業を解禁する、といったデータもあったことから、今後はさらに副業を認める会社は、増えていくと思われます。

所属している会社が副業を解禁するタイミングに備えて、副業を始める準備をしておいたほうがいいかもしれません。

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