近年、人材の流動化により終身雇用は崩れ、転職を考える人が増加しています。

40代になっても転職を検討する人が増える一方で、資格を持たない40代の転職は厳しいという意見もあります。

40代 資格なしでも転職を成功させるためにはどうするべきなのでしょうか。

今回の記事では、40代の転職事情から資格なしで転職するためのステップ、転職しやすい業界・職種まで徹底解説します。

この記事の監修:勝田健氏
スタートアップ企業に特化した転職エージェントに従事。大手VCと連携し、累計約100名のCxOポジションに紹介実績あり。転職エージェント歴22年。スタートアップ業界の豊富な人脈(VC・起業家・CxO)と知見が強み。個人の「WILL」をベースとしたキャリア支援実績は累計2000名以上。スタートアップ企業の採用支援経験を活かし、自らも複業(結婚相談所・採用コンサルティング・新規事業起ち上げ支援)を実践。幅広い業界・サービスのビジネスモデルを熟知。

40代の転職事情|資格がなくても転職できる?

まずはじめに40代の転職事情をおさらいします。40代の転職の動向はどのようになっているのでしょうか。

転職入職率 

厚生労働省「雇用動向調査」(2019年上半期)によると、全体の転職入職者数は

3001万8000人で、転職入職率は5.9%でした。

※転職入職率・・・常用労働者のうち転職した労働者の割合

男女別にみると、男性の転職入職者数は1354万9000人で転職入職率は5.0%、女性の転職入職者数は1646万9000人で転職入職率は 7.1%です。

では、40代ではどれくらいの労働者を成功させているのでしょうか。

40〜44歳では男性が3.6%、女性が7.7%、45〜49歳では男性が3.7%、女性が6.0%でした。

いずれの結果でも、男性の労働者の割合が低い結果が出ています。

転職成功率(入職率)

転職サービス「doda」によると、2020年に転職した人の平均年齢は32.0歳と男女ともに過去13年間で最も高い結果になりました。

転職成功者の年齢割合でみてみると、40歳以上の割合は2019年は全体の14.3%でしたが、2020年は全体の15.5%と割合が増加しています。

特に40代は技術職(IT・通信)に転職した割合が多く、年代別での比較・前年との比較ともに増加幅は最大でした。

40代以上の技術職の転職が成功するケースが増えたことにより、全体の転職成功率が増加したといえます。

平均応募社数 

40代は転職に向けて平均12.4社に応募しています。

業界や職種、地域によっても異なりますが、転職を成功させるためには12~13社の選考を受ける必要があるといえるでしょう。

20代は22.2社、30代は19.1社と、各年代と比較してみると40代の平均応募社数は少ないです。

これは、40代になると年収面・待遇面での制約が増え、条件にマッチする求人が限られるからです。

また、自身が強みを持つ分野、経験を活かせる分野への転職を検討するため少ない社数に絞るといえます。

40代で転職する3つのメリット

40代で転職する3つのメリットを紹介します。

給料などの待遇が向上する

今までの積み重ねてきたスキルや知識にマッチした転職先を選べば、資格なしでも40代の転職で給料などの待遇が向上する可能性があります。

転職で年収を上げるためには専門スキルだけではなく、大規模な組織のマネジメント経験などが求められます。

若手層であれば上記の要件を満たしていない可能性もありますが、40代であれば経験してきた分野において一定の専門スキルや実績が備わっています。

上記すべてを揃えた人材は多くの企業から引き抜きやリファラル採用、ヘッドハンティングがあるため、給料をはじめとした待遇が向上する可能性があります。

裁量権が上がり経営層を目指せる

40代でも。転職によって裁量権が上がり、経営層を目指せるケースもあります。

大手企業のなかには上位の役職で活躍できる可能性があっても、ポストの空き不足や年功序列で思うようにキャリアが積めない人もいます。

しかし、一部の中小企業やベンチャー企業、スタートアップ企業は、40代の人材を経営クラスとして求めている傾向が強くなっています。

これらの企業に入社すれば経験豊富な40代は上位の役職に就き、裁量権を持って働くことができるでしょう。

さらにスキルを高められる

40代の転職は、新たなチャレンジの機会にも繋がります。

未経験の職種への転職は難しいですが、今までの経験を活かして新たに異業種・異分野に挑戦することは可能です。

もちろん、同業種であれば転職がしやすい傾向があります。

一方で、新たなスキルを手に入れるために同業他社以外への転職を考えている人もいます。

転職で1番叶えたいことは何か、今までの経験で活かせる部分はどこなのか、冷静に自分のスキルを把握し、未来像を描くことで新たなチャレンジが可能です。

40代 資格なしでも転職でアピールできるポイント

40代の転職で資格なしでもアピールできるポイントを3点、紹介します。

大規模組織のマネジメントスキル

40代の転職において、大規模組織のマネジメントスキルは有利になるポイントの1つです。

多くの企業が管理職として活躍できる人材を40代の採用要件としています。

特にコロナ禍では社会情勢の見通しが立たないため、限られた予算をかけて未経験者を育てるよりも、即戦力として早期の活躍が見込める人材を求めています。

大規模組織のマネジメントスキルは汎用性が高く、業界問わず活かせるため、転職市場でも評価されるスキルになるでしょう。

マネジメントスキルをアピールするときはマネジメントの経験期間や部下の人数を数字で表すだけではなく、客観的なエピソードを交えて伝えることが大切です。

エピソードと合わせて伝えることで「どんな思考を持ち、どのようなプロセスを踏んで課題解決をするのか」「自社で同様にマネジメントできる人材なのか」を採用担当者は判断できます。

逆に、40代でマネジメント経験がないと今後マネジメントのポジションでキャリアを積むことは非常に難しいです。

マネジメント経験がない人はエキスパートとして専門性を磨くことも視野に入れましょう。

業務に特化したスキル(即戦力)

資格がなくても、蓄積してきた業務に特化したスキルは、魅力的なアピールポイントになります。

中途採用は基本的に、即戦力採用が重視され、特に40代は豊富な経験や業務に特化したスキルが期待されます。

現職のみで使えるスキルをアピールするだけではなく、転職先の業務に特化したスキルがあることをアピールすることで、即戦力人材として採用につながる可能性が高くなります。

今までのキャリアを振り返り、自分が今どのようなスキルを持っているのか把握することが大切です。

企業カルチャーに合う柔軟性

転職活動においては、企業カルチャーに合うかどうかも重視されるポイントです。

40代は若手層と比較して社会人経験が長く、仕事の進め方や考え方はキャリアの中である程度形成されているでしょう。

しかし、希望する企業の企業文化とマインドが合わなければ、どんなに優秀な人材であってもミスマッチになり双方の成長の妨げになる可能性があります。

転職先の企業カルチャーにマッチし、物事を柔軟に考える人材であることを採用担当者にアピールすることで、資格なしでも転職を成功させることができます。

40代でも転職するための5つのステップ

では、40代でも転職を成功させるためにはどうすればよいのか。ここでは5つのステップに分けて考えていきます。

①過去の経験をスキルに分解する

まずは過去の経験をスキルに分解します。今まで在籍していた企業での経験を洗い出し、どんな経験をしてきたのかを分解していきます。

専門的なスキルだけではなく、どこでも通用するポータブルスキル(業種や職種が変わっても「持ち運び可能な能力」)も洗い出していきましょう。

スキルを分解していくと会社独自のスキルとポータブルスキルが出てきますが、会社独自のスキルを持っているだけでは転職先で活かすことができません。

ポータブルスキルを持ち合わせることでどんな会社でも活躍できる可能性があります。

上述した組織マネジメント力だけでなく、課題を認識する力など、自分が何に長けているのかを分析することが重要です。

仕事以外の取り組みでもアピールできる部分があればスキルとして挙げましょう。

スキルに分解することで、自分の「できること」が可視化されます。

過去の経験を洗い出すことで、いざ面接をするときに自分がどんなスキルを持っているのか、何ができるのか答えることができます。

②自分の市場価値を知る

次に、自分の市場価値を知りましょう。

市場価値を知ることで、今の自分は他社からみて需要がある人材なのか客観的に判断できます。

おすすめはビズリーチのような転職サイトへの登録です。

転職サイトに経歴を登録すると、優良企業やヘッドハンターからスカウトメールが送られてくることがあります。

登録することでどんな企業からスカウトがくるのか、自分の経歴のどの部分が転職市場で求められているのか確認することができます。

③5年後、10年後の将来像を描く

転職を成功させるためには企業を受ける前に5年後、10年後の将来像を描く必要があります。

自分がどうありたいのか、どんなキャリアを築いていきたいのか把握することでアクションが変わるからです。

5年後、10年後の将来像を叶えるためには1年後、2年後、3年後と自分が何をすればいいのかが見えてきます。

1人で考えるのが難しい場合は、キャリアコーチングやキャリアコンサルティングを受けるのも1つの手です。

④業界・業種を狭め、志望動機を深堀る

なりたい将来像を描けたら、それを叶えられそうな企業の選考を受けましょう。

闇雲に企業を受けるのではなく、業界や業種を狭めていくことで転職を成功させることができます。

理想は自分に「できること」と思い描く「将来像」が合致する企業に絞って選考を受けることです。

今までの経験とこれからやりたいことが点と点で結ばれるように、企業の志望動機の深堀りをしましょう。

この深堀りによって、一貫性がある志望動機になります。

⑤期限を決めて動く

転職活動の準備ができたら期限を決めて動きます。

40代の転職活動期間は平均で3〜5ヶ月です。離職中であれば日中に面接を組むことができますが、現職中であれば転職活動をおこなう時間も限られます。

ダラダラと活動するのではなく「この期間からこの期間まで」と集中して動きましょう。

40代以降の転職は年齢を重ねるごとに難しくなります。現職で自分が理想とする将来像を叶えられないのであれば、すぐ行動に移すことが重要です。

一人で活動をするのが不安な方は転職エージェントを利用するのもよいでしょう。

転職エージェントは常日頃から転職市場の情報をキャッチアップしています。

そのため、今どんな業界が伸びているのか、どんな会社が採用に力を入れているかを把握しています。

客観的な意見を述べてくれる存在なので、積極的に利用して転職を成功させましょう。

>>40代の転職の現実とは?40代で転職を成功させる方法を徹底解説

資格なし、40代でも転職しやすい業界・職種

40代でも転職しやすいと言われる業界・職種を紹介します。

営業職

営業職は転職しやすい職種の1つです。

なぜなら「提案力」や「ヒアリング能力」などは、企業の特徴を超え、どこでも必要になるスキルであり、ほとんどの企業に営業力が求められているからです。

営業の仕事は自社の商品やサービスをクライアントに提案し、利益を生むことがミッションです。

営業職の魅力は結果が数字に現れ、評価されやすいところです。業界によっては達成度合いに応じて昇給しやすく、インセンティブが貰えることもあり、年収も上げやすいです。

顧客に直接感謝される機会も多いでしょう。

長年、営業職で活躍してきた人は、同じ業界や近しい商材を扱う営業職への転職は比較的難易度が低い傾向にあります。

もし未経験で営業職に転職する場合は、IT業界や保険業界、不動産業界では未経験でもOKな求人が多い傾向にあります。

また、40代は若手層よりも社会人経験が豊富とみなされます。

その結果「提案力」や「ヒアリング能力」だけではなく「コミュニケーション能力」や「マネジメント能力」、「語学力」など多岐にわたる能力が求められてくるでしょう。

コンサルタント業

コンサルタント業も40代で転職を考えている方におすすめの職業です。

コンサルタントとは、クライアント企業が抱える課題を解決するための方法を考え、改善するためにアドバイスする仕事です。

営業職は商品やサービスを提供しますが、コンサルタントはコンサルティング自体が商品そのもののため、コンサルティング行為に対して報酬が支払われます。

コンサルタント業では専門分野の知識があるかを重視します。

40代は若手層と比べると業界の専門知識があるので、今までの経験やスキルを生かしたコンサルタント業に向いていると言えるでしょう。

コンサルタント出身者が他のコンサルティングファームへの転職は比較的容易です。

一方で、事業会社への転職は求人数を考えると30代前半が好ましいです。

自身の適性や志向を考え、進むキャリアを見極めましょう。

IT系エンジニア職

以前まで、IT業界では「35歳定年」の風潮がありました。

しかし現在は、業界全体で経験者のエンジニアが不足しているため、IT系エンジニア職は40代でも重宝されます。

40代以降の転職事例は年々増えており、なかには50代・60代のIT系エンジニア職を採用した企業もありました。

転職を成功させた人たちの共通点を見てみると、プログラミングスキルを貪欲に学び続けている姿勢が挙げられます。

IT系エンジニア職は技術職です。

そのため、最新技術に関する興味やニーズの高い技術へのキャッチアップは40代以降でも求められます。

また、企業は40代に対し若手層の育成やマネジメントへの期待も寄せています。

培ってきた技術力にマネジメントスキルをかけあわせることで、IT系エンジニア職は転職活動を有利に進められます。

40代から取得するのにおすすめの資格

ここまで資格なしでも転職はできると述べてきましたが、取得することで転職が有利になる資格もあります。

下記で40代の転職に向けておすすめの資格を紹介します。

・中小企業診断士

中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対し診断・助言を行う専門家です。

専門知識を持って企業の成長戦略の策定のアドバイスやコンサルティングをおこないます。

40代〜60代で活躍している人が多く、経営分野で唯一の国家資格です。

中小企業診断士の資格を取得することで、企業の経営に関する知識があることを証明できます。

現在の勤務先で活かしたり、独立して開業したりすることも夢ではありません。

転職先の候補としては、コンサルティング会社や士業の事務所、公的機関が挙げられます。

中小企業診断士の資格を取得するためには1次試験、2次試験、実務補習・実務従事をクリアする必要があります。

ストレートで合格できる人は約4%と決して高くはない数値ですが、中小企業診断士の資格を取得することで、市場価値を高める一歩につながるでしょう。

【参考 :中小企業診断士試験の難易度は?合格率・科目・学習スタイルから分析-スタディング

・キャリアコンサルタント

40代からの資格取得ではキャリアコンサルタントの取得もおすすめです。

キャリアコンサルタントとは、個人のキャリアコンサルティングをおこなう専門家を指します。

相手が適性や能力、関心に気づくよう自己理解を深めることを促し、主体的にキャリアを選択するために助言することが仕事です。

平成28年4月よりキャリアコンサルタントは国家資格となり、名称独占資格とされました。

そのため、資格を取得していない人はキャリアコンサルタントと名乗ることができません。

学科試験と実技試験の両方に合格し、キャリアコンサルタント名簿に登録することではじめて「キャリアコンサルタント」と名乗ることができます。

資格取得後は主に、企業の人事・教育関連の部署や大学のキャリアセンター、人材紹介会社・人材派遣会社、個人事業主として活躍するケースが多くみられます。

・プロジェクトマネージャー試験

現在IT関連の仕事をしている人は、プロジェクトマネージャー試験を視野に入れるのもよいでしょう。

プロジェクトマネージャー試験とは、ITプロジェクトの成功請負人とされ、IPA(情報処理推進機構)が実施している国家資格です。

プロジェクト全体の責任を持ち、成功に導くためにプロジェクトの実行・管理する人を対象としています。

高度IT人材として専門分野を持ち、プロジェクトマネージャーとして必要な資質を身につけることが目的です。

試験に合格することで、予算・スケジュール・品質管理などに関する知識の証明ができたり、中小企業診断士の第1次試験科目が免除になったりします。

プロジェクトマネージャーの仕事を担っている人だけではなく、これからプロジェクトマネージャーを目指したい人にもおすすめの資格です。

まとめ

このように、難易度の高い40代からの転職でも、成功するルートは確実に存在しています。

40代で資格なしでも転職を成功することは可能と言えます。

しかし、資格がなくても転職を成功させるためには戦略立てて行動することが必要です。

今までの経歴や思考を整理し、自分に合った転職活動をすすめることで納得のいくキャリア形成をすることができます。

1人で転職活動を進めていくと書類選考や面接に通過しない、希望する企業から内定が出ないなど課題につまずくことがあるかもしれません。

もし、そんな場面に直面したときは転職エージェントをはじめとした周りの存在に頼ることも大切です。

正しい転職活動をおこない、自分が思い描くキャリアを叶えていきましょう。