40代のビジネスパーソンのなかには「仕事でさらに自分を高めたい」「会社に依存せずに自立した働き方をしたい」とキャリアアップを考えている方もいるでしょう。
自分を高める方法のひとつであるキャリアアップとは「ある分野で今以上のスキルを身につけて、経歴を高めること」をいいます。
ただし、一人ひとりに「適した」キャリアアップ方法は異なります。最も自分に合ったキャリアアップを実現するには、どうしたらいいのでしょうか。この記事では、キャリアアップをするメリットや、キャリアアップの成功確率を上げる5つのステップを解説します。
記事の目次
キャリアアップとは
「キャリアアップ」とは、特定の分野で専門的な知識を身に付け、スキルを向上させ、経歴を高めることです。
現在、高収入の職場に転職したり、社内でポジションが上がるなど、市場価値を高めていくことも「キャリアアップ」に含まれます。
「キャリアチェンジ」との違い
キャリアチェンジとは、これまで経験してきた業界とはまったく異なる未経験の業界や職種へ転職することを指します。
キャリアアップと大きく異なるのは、未経験の業界や職種に転職するために「経歴を高める」視点がない点です。もちろんキャリアチェンジによって、全く新しいスキルが身につき、さらに自身の市場価値が向上する可能性は高くなっています。
未経験の業界や職種に転職するキャリアチェンジは、40代のビジネスパーソンにとっては、ハードルが高いかもしれません。一方で、まだ社会経験が浅い20代から30代の若年層の転職希望者と同じ土俵で転職活動を行うことになるためです。
よほど人材不足の業界や職種でなければ、40代からのキャリアチェンジはやや難しいといえるでしょう。
>>関連記事:キャリアチェンジとは|5つの成功ポイントやタイミングを解説
「スキルアップ」との違い
スキルアップとは、OJTや資格の勉強といったトレーニングを通して一人ひとりが持つ能力をアップさせることを指します。
キャリアアップが経歴を高めることを指すのに対して、スキルアップは能力を高めることを意味します。
スキルアップをすれば、キャリアアップにも繋がります。スキルの向上によって、携わる業務の幅や深さが広がり、見える「世界」が変わるため、さらにキャリアアップするチャンスを得られる可能性が高まるでしょう。
3パターンに分かれるキャリアアップの方法
キャリアアップするには、いくつかの方法があります。
ここからはキャリアアップする方法を、3つに絞って解説していきます。
転職する
キャリアアップする方法のひとつが、転職です。
現在の職場では、経歴を高めることが難しい場合に有力な選択肢となります。たとえば、すでに課長や部長といった「席」が埋まっており、長期的に昇進のチャンスが見込めないケースが該当するでしょう。
転職を検討する大きな意味は「自分の市場価値を推し量れる」ことです。
転職するにあたって自分の経験やスキルを活かせる職場を探したとき、
- 今の会社の待遇が自分の経験やスキルに見合ったものなのか
- より待遇が上がる会社があるのか
といった俯瞰した視点から、冷静に自らを振り返ることができます。
より待遇が上がる会社やキャリアアップできる会社があった場合、本格的に転職活動を始めてもいいと判断できるのです。
即戦力として活躍できる会社があれば、待遇について交渉するチャンスもあるでしょう。
社内で昇進する
自社内でキャリアアップする方法もあります。
昇進するためには、会社ごとに一定の条件があるでしょう。社員に公表されている昇進の条件を満たしたり、これまでの実績が評価されたりしたとき、キャリアアップが実現するはずです。
社内で昇進するキャリアアップの大きなメリットは以下です。
- 職場の雰囲気が変わらないため、新たな人間関係に悩まずに済む
- 成否が確定していない転職活動に取り組むさまざまな不安を抱えずに済む
社内で昇進するキャリアアップには、毎日の努力だけでなく、周囲への誠実さが求められます。なぜなら、昇進がゴールではないからです。
同僚や先輩と昇進を競った結果、人間関係をこじらせると、会社に居づらくなる可能性があります。
社内で昇進するキャリアアップを目指す場合は、以下に気をつけましょう。
- 自分の機嫌は自分でとる「ストレスケア」を心がけること
- 周囲の人には立場や職位を問わず謙虚に接し、仕事に対しては自信をもって取り組むこと
複業で経験を積む
キャリアアップする方法には、転職でも社内での昇進でもない「複業(副業)で経験を積む」方法もあります。今回紹介したキャリアアップするための3つの方法のうち、もっともリスクが少ない方法といえるでしょう。
その理由は、転職による経済的、精神的な負荷がなく、会社内の人間関係に気を遣う必要もなく、同僚や先輩と昇進を争う必要もないからです。さらには自分で仕事を選択できる「自由」があります。
もちろんキャリアアップを目指すわけですから、自らがこれまで積み上げてきた経験や経歴を高めることが前提となります。
まっさらな「自由」ではないものの、自らの経験や経歴が「自信」やバネとなって、より高いレベルに到達するための足がかりとなるのです。
キャリアアップに重要な「キャリア自律」の考え方
キャリアアップに不可欠なのは「キャリア自律」の考え方を持つことです。自律とは自らのキャリアを主体的に形成することを指します。企業に自身のスキルアップやキャリアアップを委ねるのではなく、自主的に選択しながら、キャリアプランに応じたキャリア形成を主体的に行っていく考え方です。
現在、終身雇用や年功序列といった、従来の「サラリーマン」としての「会社ありき」の働き方が日本の社会全体で、見直されています。
新卒で会社に入社すれば、定年まで給料が保証される時代ではなくなったために、サラリーマンといえど、自らのキャリアを自分で考え組み立てていかなければいけなくなりました。
「会社が仕事を与えてくれて、年齢を重ねれば昇進できる」時代ではなくなったのです。
会社にいても「キャリア自律」を実現することはできます。
現状は複業(副業)を推奨したり、ある仕事に対して職務を遂行できるスキルを持った人をアサインする「ジョブ型雇用」の制度を導入したりする企業が増えつつあります。
むしろ企業側も「キャリア自律」を推奨し始めています。積極的にスキルを得て、市場価値を高めていく考え方が重要です。
>>関連記事:キャリア自律とは|実現に向けた5ステップから企業事例、メリットまで網羅
キャリアアップを成功に導く5つのステップ
キャリアアップを成功させるためには、どのようなステップがあるのでしょうか。
ここからは、キャリアアップを検討している方に向けて、キャリアアップを成功に導く5つのステップについて深堀して解説します。
ステップ1:これまでの経歴を元にキャリアの棚卸しをする
キャリアアップを成功させるための最初のステップは「キャリアの棚卸し」を行うことです。
キャリアの棚卸しとは、自分がビジネスパーソンとして仕事を始めたときをスタートとして、時系列にしたがって「どのような仕事をしてきたか」を振り返ることです。
大きな契約をとった、昇進したといった「目立つ」成果だけではなく、日々の業務も含めて振り返ってみましょう。
振り返り方は、たとえば以下が挙げられます。
- 自分自身はミスに対してどのような考えを持っているのか
- 周囲のミスに対してはどのような態度を取っていたか
- 上司や部下と円滑なコミュニケーションが取れていたか
普段の言動をより細かいところまで掘り下げてみると「自分」というビジネスパーソンを客観的に見ることができます。
自分を客観視できると、自分の弱みや強みを改めて認識できるでしょう。強みを生かしたキャリアアップを実現させるための道筋が見えてくるはずです。
>>関連記事:キャリアの棚卸しの7つのステップ|目的、メリット、自己PRへの活用法まで解説
ステップ2:中長期的なキャリアプランを考える
キャリアの棚卸しが終わったら、次は中長期的なキャリアプランを考えます。期間の目安として、中期では5年、長期とは10年ほどです。
まずは10年後の長期的なキャリアプランから考えましょう。なぜなら、大きな目標を設定して直近で「達成しなければいけない小さな目標」を逆算して設定したほうが、モチベーションをより長く保てるためです。
長期的なキャリアプランは、中期的なキャリアプランをマイルストーンとした先にあるものです。キャリアのひとつのゴールとなるため、ある程度「大きな」目標を設定してもいいでしょう。
以下のように一人ひとりが考える「10年後に実現したいこと」を決めます。
- 難関資格を取得して、起業(独立)する
- 複業収入を本業の収入の2倍にする
長期的なキャリアプランを設定したら、10年後の目標を達成するために、5年目には達成しておきたい目標を洗い出します。複数ある場合は、3年後のキャリアプランも中期的なプランのひとつとして作成します。
リカバリができないほど挫折しては意味がないため、家族を顧みないほど、あるいは借金をしなければいけないようなキャリアプランは、絶対におすすめできません。
中期的なキャリアプランのポイントは、ほどよく息抜きできる時間的、経済的、精神的な余裕があることが、成功への近道といえます。
>>関連記事:キャリアプランとは | メリットから必要な背景、作り方まで完全網羅
ステップ3:自分の将来像と現状のギャップを理解する
中長期的なキャリアプランができたら、長期的なキャリアプランのゴールと、棚卸しした自分のキャリアとのギャップを、紙に書き出してみましょう。
書き出すことで、よりわかりやすくギャップを理解できます。ギャップを理解するのは「今の自分に足りないもの」を把握するためです。
ここでギャップがあることに、悲観的になったり、絶望したりする必要はまったくありません。なぜならキャリア自律をしようと考え、キャリアアップのための行動を起こすことは、まだ自分が到達していない高いレベルに挑戦しようとしている段階だからです。
足りないものを、キャリアアップのモチベーションに変えていきましょう。
ステップ4:マイルストーン(小さな目標)を設定する
自分の将来像と、現状の自分とのギャップが洗い出せたところで、そのギャップをひとつひとつなくすためのマイルストーンを設定していきます。
ギャップをなくしていくための優先順位のつけ方には、以下のポイントを考慮しましょう。
- 5年後(3年後)の中期的な目標を達成するために不可欠なこと
- 1カ月~3カ月の超・短期で解決できること
- 経済的、心理的負荷が少ないこと
ポイントは「後回しにしないこと」です。今やりたくないことを優先順位を下げるやり方では、中期的な目標を達成できません。1カ月後の自分を振り返ったとき「できたのにやらなかった」と後悔しない選択を積み重ね、着実にギャップを減らしていきましょう。
ステップ5:ギャップを埋めるために必要なスキル習得を目指す
ギャップを埋める方法のひとつに、新たなスキルを習得する方法があります。
「自分に足りないもの」が洗い出せたら、足りないものを充足させられる資格がないか検討しましょう。
民間資格と国家資格がある場合は、国が資格の価値を保証している国家資格がおすすめです。国家資格のなかには「その資格を持った人しかできない業務」、いわゆる独占業務がある資格があります。
【独占業務がある資格】
- 医師
- 看護師
- 行政書士
- 1級建築士
- 宅地建物取引士
- 弁理士
これらの独占業務がある資格は、資格を持っていることで専門的な知識を有していることの証明にもなります。
例えば宅地建物取引士であれば、不動産取引における以下の業務が、宅地建物取引士にしかできない独占業務にあたります。
- 重要事項の説明
- 重要事項説明書への記名・押印
- 契約書(37条書面)への記名・押印
ただし2022年5月に法律が改正され「重要事項説明書」、「契約書(37条書面)への記名・押印」については押印が廃止され、電子的な方法による書面交付が可能となりました。
時代の流れによって一部の独占業務が変化する一方で、重要事項の説明や書面への記名は揺るがず必須であるため、宅地建物取引士の資格の重要性に変化はない、といえるでしょう。
宅地建物取引士の資格を取るメリットは、数々の法律に守られている点です。
不動産業を開業するときには、一つの事務所で業務に従事する者5人に1人以上の割合で、専任の宅地建物取引士を設置することが義務づけられています。
つまり宅地建物取引士の資格を保有していると、不動産業を新たに営みたい人が出てきた場合に、専任の宅地建物取引士として就職する道が常に開かれているのです。
ではここから、資格を取るための現実的な方法を検討します。
これまでの生活スタイルの中に、資格を勉強するためのスケジュールをどのように組み込むのかを考え、家族の協力が必要な場合は必ずよく話し合い、家族の協力を得ましょう。
「キャリア自律」の実現のため、家族を犠牲にしてはいけません。おそらく家族と自分の幸福な未来のために、キャリア自律を目指したはずだからです。
またキャリアアップのために取得したい資格を、いくつか選べる状態であったときには、以下を基準に、取得する資格を決めるといいでしょう。
- 国家資格であること
- 更新期間が決まっていない、あるいは更新が容易であること
資格のなかには更新期間が決まっていたり、長期間の講習が必要であったり、更新料が必要になったりするケースがあります。
取得する資格は、事前に十分に調べておきましょう。
キャリアアップを成功させるためのポイント
ここからは、キャリアアップを成功させるためのポイントをポイントをいくつか紹介します。いずれも必要不可欠なものであるため、もれなく行動できるように内容を詳しく把握しておきましょう。
新しいスキルを獲得する
キャリアアップの成功をより確実にするために、新たなスキルを身に着ける方法があります。
短期的に成果を上げたい場合、誰にでもわかりやすい「資格」という形でスキルアップすることがおすすめです。ただし資格の種類によっては、スキルアップやキャリアアップにつながらないものもあるため、取得する資格の選定は厳しく行いましょう。
時代の変化と求められるニーズを把握する
キャリアアップを成功させるには、時代の流れを読み取ることが求められます。
社会にニーズがあるスキルを身につければ、将来の安定的な収入につながるうえ、多くの人の役に立てるやりがいも得られるでしょう。
想定しているキャリアは5年後、10年後も広いニーズがあるのか、社会から求められるのかを客観的に判断しなくてはいけません。
客観的な判断をするためには、客観的なデータが必要です。毎日ビジネスニュースをチェックする、興味のある業界の株価や経済指標の動向をチェックするなど、広い視野で社会の変化をとらえましょう。
自分の市場価値を常に意識する
時代の変化とともに把握しておかなくてはいけないのが「自分の市場価値」です。キャリアアップしても、市場がキャリアアップした自分を必要としていなければ、その価値は「ゼロ」になってしまいます。
今人材は不足しているのはどのような業界、業種か、キャリアアップすることで不足している業界に自分の価値を見出すことはできるのか、などを意識しましょう。
- 必要な人材にどのくらいの給与が支払われているのか、
- どのような待遇なのか
といった情報をチェックしましょう。
相場としての給与が自分が望む水準に達していなければ、より高いキャリアを目指す方向に舵を切る必要があるためです。
自分の能力やスキル、キャリアの価値を決めるのは、自分ではなく市場です。「いくらで評価されるのか」を意識して、常に上を目指しましょう。
相場を知るには、転職サイトを利用する方法があります。転職を希望していなくても転職サイトに登録することは可能であるため、会員登録をして現在のキャリアと将来のキャリアの「価値」を確認しておきましょう。
キャリアアップに悩んだときの相談先
キャリアアップの方法や方向性に悩んだときは、知識を持った第三者に相談することをおすすめします。
家族や友人知人に相談するケースとは異なり、客観的な視点から知識に基づいた適格なアドバイスが受けられるでしょう。おすすめの相談先を、いくつか紹介します。
社内のキャリア相談室
自社内のキャリア相談室は、将来のキャリアに悩んだときの相談先として最も身近な存在といえます。
ただし、自社内でのキャリアアップについてのみの回答であるケースもみられることから、転職や独立を前提としてキャリアアップを考えている人には向かない相談先といえます。
自社内のキャリア相談室は、あくまで社員の福利厚生の一環として設けられたものであり、会社に貢献することが想定されている点は認識しておきましょう。
転職サービス
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まとめ
この記事では「キャリアアップとは何か」について、詳しく解説しました。これまでの経歴を、さらに高めていくことがキャリアアップです。
定年までの残り年数よりこれまで積み重ねたキャリアのほうが長くなると、未経験の業界や職種には挑戦しにくいものです。自分だけならチャレンジできるかもしれませんが、家族の理解は得られにくいでしょう。家族の理解と協力が得られやすい点でも、40代からはキャリアアップという選択がベストといえます。
会社に頼らない、自分で仕事や収入をコントロールしていく生き方を希望している人は、キャリアアップを目指しましょう。